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研究館より

ラボ日記

2024.02.15

エネルギー貯蔵 〜クモ幼生編〜

私たちが研究に使っているオオヒメグモは、ありがたいことに卵をたくさん産んでくれます。別に私たちのために産んでくれる訳ではありませんが、胚発生に興味がある研究者としてはありがたい限りです。1匹の雌はだいたい5日おきに、200個以上の卵を卵嚢の中に産みつけます。正確に言うと、糸で卵嚢の一部を編んでから産卵し、さらにせっせと糸を出して卵をくるんで卵嚢を仕上げていきます。私たちは、大腸菌の培養用のシャーレに卵嚢を移し、卵から孵るのを待ちます。(実験に使う時には、幼生になる前に固定したり、RNAを抽出したりしますが。)良い状態の卵嚢ではほとんどの卵から幼生が出てくるのですが、そのような良い状態のものでも、成体まで育つ個体は1匹か、2匹か、3匹か、そのくらいです。減ってしまう要因のひとつは共食いによって食べられてしまうことのようです。もっと多くの個体を育てたいと考えて、餌のショウジョウバエを増やしても、数に対する効果はわずか。早めに1匹ずつ分けて飼育チューブに移しても、幼生は体が小さいうちは協力してハエを捕らえるようなので、むしろ育つ個体が減ってしまいます。最初は協力しているのに、なんで食べてしまうの?と思います。

動物の生態学には全く詳しくありませんが、共食いは強い個体を残すためなどと考えられていますよね。クモもそういうシステムになっているのかも知れません。また、共食いは個体を早く育てる仕組みだとも言われているようです。私もクモの様子にそれと似たような印象をもっています。飼育をしていて思うのは、体が小さいうちは1匹が食べられる量も限られているので、放っておけば飛び去ってしまったり、干からびてしまったりする餌を兄弟で協力して食べ、それぞれに栄養として蓄えておくのではないか。そして、体の大きくなった個体が共食いによりその栄養も摂取しているのかも、と。兄弟はエネルギー貯蔵の役割なのかも知れません。・・・なんて書きましたが、あくまでも印象。なんの定量性もありませんので、話半分ということで。

動物の初期発生に興味を持ち、オオヒメグモを用いて研究しています。