ラボ日記
2023.12.01
HerbivoreとPollinator
「昆虫と植物の関係性」と聞いて何を思い浮かべますか?きっとこのページの読者の皆さんの多くは,生命誌研究館のΩ食草園で紹介している「食う–食われる」の対抗関係をイメージされることでしょう。館の活動が浸透していることを喜ばしく思う一方で,実は生物学者としては若干複雑な気持ちを抱く部分もあり…。
陸上植物の90%以上はしっかりとした花を咲かせる被子植物です。そして,それらの受粉の大部分を担うのは昆虫です。そう,「花粉媒介」を介した共生関係もまた,進化の過程で昆虫と植物が構築してきたものなのです。herbivore(食植者の意味)とpollinator(花粉媒介者・送粉者の意味)は,昆虫と植物の関係性を理解する上での超重要キーワードです。幼虫のうちは食植者で成虫になると送粉者というパターンもあり,それはそれで面白い研究例がたくさん存在しますが,非常に大雑把に述べるならば,食植者の代表例が生命誌研究館でもおなじみチョウの仲間であり,送粉者の代表例としてはミツバチやマルハナバチといったハナバチ類が挙げられます。ちなみに,これまた生命誌研究館おなじみのイチジクコバチはイチジクの唯一の送粉者ですが,ハナバチ類ではありません。そこがまた面白いところなのですが,今回は深入りせずにおきます。
送粉者がいわゆる自然生態系において重要な役割を果たすことはもちろんですが,農作物の受粉を通して我々人間が受けている恩恵は莫大なものとなります。10年ほど前の研究によると,日本において送粉昆虫が農業にもたらす利益は年間5000億円近くに上るそうです。ところが,近年の気候変動の影響で送粉者の置かれる状況は悪化しており,また,SDGsとの関連からも送粉者の中核を担うハナバチ類の保全の重要性は世界的に注目されています(もちろんハナバチだけ保全すりゃ良いってわけじゃないけどね!)。そんな中,4年ぶり3回目となるミツバチサミットが茨城県つくば市において11/18–21の日程で開催されました。自身が企画した真面目なシンポジウムの司会・講演に加え,もう少しフランクに一般の方々とトークするサイエンスカフェ講師との二刀流参加となったため予想以上にヘビーでしたが,ハナバチと植物の関係について多くの興味深い話を聞くことができ,充実した三日間でした。
次の春には,是非ハナバチ類をはじめとした送粉者たちの活躍にも思いを馳せながら植物を観察してみていただけると嬉しく思います。
陸上植物の90%以上はしっかりとした花を咲かせる被子植物です。そして,それらの受粉の大部分を担うのは昆虫です。そう,「花粉媒介」を介した共生関係もまた,進化の過程で昆虫と植物が構築してきたものなのです。herbivore(食植者の意味)とpollinator(花粉媒介者・送粉者の意味)は,昆虫と植物の関係性を理解する上での超重要キーワードです。幼虫のうちは食植者で成虫になると送粉者というパターンもあり,それはそれで面白い研究例がたくさん存在しますが,非常に大雑把に述べるならば,食植者の代表例が生命誌研究館でもおなじみチョウの仲間であり,送粉者の代表例としてはミツバチやマルハナバチといったハナバチ類が挙げられます。ちなみに,これまた生命誌研究館おなじみのイチジクコバチはイチジクの唯一の送粉者ですが,ハナバチ類ではありません。そこがまた面白いところなのですが,今回は深入りせずにおきます。
送粉者がいわゆる自然生態系において重要な役割を果たすことはもちろんですが,農作物の受粉を通して我々人間が受けている恩恵は莫大なものとなります。10年ほど前の研究によると,日本において送粉昆虫が農業にもたらす利益は年間5000億円近くに上るそうです。ところが,近年の気候変動の影響で送粉者の置かれる状況は悪化しており,また,SDGsとの関連からも送粉者の中核を担うハナバチ類の保全の重要性は世界的に注目されています(もちろんハナバチだけ保全すりゃ良いってわけじゃないけどね!)。そんな中,4年ぶり3回目となるミツバチサミットが茨城県つくば市において11/18–21の日程で開催されました。自身が企画した真面目なシンポジウムの司会・講演に加え,もう少しフランクに一般の方々とトークするサイエンスカフェ講師との二刀流参加となったため予想以上にヘビーでしたが,ハナバチと植物の関係について多くの興味深い話を聞くことができ,充実した三日間でした。
次の春には,是非ハナバチ類をはじめとした送粉者たちの活躍にも思いを馳せながら植物を観察してみていただけると嬉しく思います。
宇賀神 篤 (研究員)
所属: 昆虫食性進化研究室
現在はアゲハチョウの脳の研究を進めています。これまでの研究はリサーチマップを参照。