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研究館より

ラボ日記

2021.04.01

高校生との研究活動 〜その後〜

昨年のラボ日記にも書きましたが、現在プラナリアを用いて高校生との研究活動を進めています。研究の面白さを体感していただきたい、論理的な思考の方法論を知って欲しいという目的で高校の先生と打ち合わせをしつつ生徒さんを巻き込んで走り始めました。当初は、月にいちどは集まって議論をする予定でした。議論で最も重要なことは相手の意見を無批判に聞くことと自分の考えを丁寧に話すことです。このやりとりを繰り返すことで、議論の初めには誰も思ってもいなかったアイデアが浮かんできたりしますので研究活動には議論が欠かせません。

実際に高校生たちとやろうとしていたことは、それぞれに学校や自宅でやってきた実験の結果を共有すること、そのデータについて話し合うこと、そして次に行なう実験を考えることです。しかし、コロナの影響でなかなか直接会うことに至らず、メールでデータを共有しながら議論をする日々が続きました。実験の生データを送ってもらい、その意味についてそれぞれが思うところを述べるという作業を繰り返すのですが、この作業がなかなか面白いのです。最初は「とりあえず」という感じで実験を始めましたが、データが出てくるに伴って実験方法を研ぎ澄ましていくことになります。そうやって少しずつ実験方法を変えて実験をしていくと、それぞれの実験結果が持つ意味が浮き彫りになってきます。新しい実験のみが意味を持つのではなく、最初の思いつきで行なっていた実験にも意味付けができるようになってきます。そうこうするうちに一つの流れが見えてくるということです。

議論の大前提として実験を行なう生徒さんの誠実さと丁寧さが求められます。一つ一つの作業を丁寧にしなければ実験結果に雑音が入ります。ついつい出てほしいと望むデータを人は出しがちなのですが、それでは本当に知りたいことには辿り着けません。予断なく誠実に結果を集める作業も必要なのです。先日、久しぶりに皆で集まって議論の時間を持ちました。その場で、高校2年生の女子生徒さんが時間をかけてさまざまな方向から取り組んだ実験結果をみて感動しました。そこに並んだ数字のひとつひとつが生き生きとしているように感じました。一つの方向を明確に示す興味深い結果でした。まだ「研究」を始めたばかりでまだまだこれからでしょうが、これから大きく伸びていくのだろうなと感じさせる時間でした。

近年、生物学ではたくさんの遺伝子が同定され、分子の働きで生きものを語ろうとする傾向が強いのですが(そしてその方法論は極めて有効であることも確かなのですが)、将来のある高校生には遺伝子の名前や分子機構を丸暗記するのではなく、生きものが見せる現象の一つ一つを丁寧に観察してもらいたいと思います。これから先はひと月に一度必ず集まって議論をしようということに決まりました。今後、この高校生たちがどのように成長していくのか、自分のことのように楽しみになっています。

どんな実験をやっているのか・・・・もう少しまとまったらこの欄でご紹介させていただけるかもしれませんが、いまはまだお話できません。

橋本主税 (室長(〜2024/03))

所属: 形態形成研究室