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研究館より

ラボ日記

2020.11.02

新しくない生活様式

梅雨の頃に取り組んでいた「ドライ実験」の解析結果から,アゲハチョウの前肢においてミカンの葉の味の感知に働きそうな遺伝子が新たに色々と見つかってきました。それらの遺伝子が働いている時期や場所を細かく調べ「より面白そう」な遺伝子を絞り込む,という作業(ウエット実験)を夏以降延々と進めています。

味を感じる上でとても重要な働きをするにもかかわらず,本当に前肢の味センサーで働いているのか誰も見たことがない,という遺伝子の仲間があります。業界(?)的にも,この仲間の遺伝子が働いている細胞を簡単な手法でキチンと見えるようにできた,という話はありません。絞り込み作業の都合上,この遺伝子の仲間についても調べないわけにはいかなかったのですが,どうせ見えないのだろうなと勝手に思い込み,尻込みしていました。そんなときに,お隣の研究室の小田室長がサラリと「んー,まぁ,やってみれば?」と一言。数年前に一度試して芳しい結果を得られなかったという背景もあり,「そんな簡単なものじゃないんですよ」などとゴニョゴニョ言いつつ少しだけ条件を変えてやってみたところ,アッサリ可視化できてしまいました。。。拍子抜けするやら嬉しいやら,そして少しの悔しさもありつつ,この先の展開が広がる結果を得ることができ,研究室としてもハッピーな感じです。生命誌研究館のこじんまり感がうまく機能した良い例と言えそうです。

上に書いた遺伝子の仲間以外についても解析を進めています。こちらについてはできれば年内,遅くとも年度内には論文の原稿を完成させたいと思っています。実験に論文書きに,と,研究者にとっての「新しくはないけれどもかけがえのない日常」が過ぎていきます。

宇賀神 篤 (研究員)

所属: 昆虫食性進化研究室

現在はアゲハチョウの脳の研究を進めています。これまでの研究はリサーチマップを参照。