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研究館より

表現スタッフ日記

2024.07.17

ガイドは難しい

館内案内スタッフとして、ガイドの仕事を始めて1年ちょっとになりますが、ガイドの仕事の難しさを実感する毎日です。以前の仕事は教師でしたので、話す事は慣れているし、生物や理科の知識はあるから何の問題もないと言われるのですが、ガイドの仕事と教師の仕事は全く異なります。授業は、事前に授業案をしっかりと組み立て,それを50分で展開をしていきます。担当学年クラスは1年を通して変わりませんから、うまく説明できなかったところは次回にもう一度説明できますし、だんだんとお互い分かり合えるようになり、理科や生物が苦手な生徒にも興味を持ってもらえるようにもなります。1年という長い時間を通して成り立っているのが授業です。

それに対して、ガイドの仕事は一期一会です。何度も来てくださる方もおられますが、基本1回限りです。1人から7、8人、様々な世代・バックグラウンドの方々をご案内します。事前準備万端の授業と違って、ご案内する皆さまに合わせて、お話をさせていただくことになります。案内する時間は短ければ40分、長くて1時間ちょっと。皆さまのことを知り、どうご案内するかを考えながら、時間配分も考え動くというのは、本当に難しい。生命誌研究館はたくさんの作品があるのですが、いつも3つか4つの作品のご案内で終わってしまいます。その案内すら、もっとお話しできることがあるのに時間になってしまいます。ガイドのあとは、説明不足ではとか、喋り過ぎたのではとか、ちゃんとできなかったという思いを繰り返しています。

ガイドの仕事では、皆さまとのいろいろな会話を通して、自分は知っているようで知らないということに毎回気づかされます。生物学全般についてのある程度の知識はありますが、生物の個々のことになると知らないことが多すぎます。例えば、チョウの生活史(卵→幼虫→さなぎ→成虫)の基本は知っていても、それぞれのチョウが年に何回産卵するとか、どの状態で越冬するとかについては、案内スタッフになるまでは全く知りませんでした。ガイド中に出た質問、自分の中にわいてきた疑問に、表現セクターの皆さんが答えてくださったり、自分で調べたり、レクチャー(催しもの)を通して新しい知識が増えていったりすることが私にはとても嬉しいことで、新しい関心の窓がどんどん開いています。

ガイドの仕事をするうえで一番大切なことは、生命誌とは何か、生命誌研究館とは何かについて理解を深めることだと考えています。最近、少しずつではありますが、季刊生命誌や中村桂子名誉館長の著作などを手掛かりに、自分なりに考えをめぐらせています。生命誌研究館の思いを皆さまと分かち合えるよう、生き物たちの38億年の進化に比べればちっぽけではありますが、ガイドも進化したいと思っています。