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研究館より

表現スタッフ日記

2024.04.01

庭をつくる 映画をつくる まちをつくる

 私はこれまで、生命誌の活動を映画のかたちにする。それをこしらえていく過程を共有する仲間とともに、そして更に、できあがった作品を鑑賞する場に訪れた方々と共に、人と人とのつながり、あるいは生きもののつながりの中での「生活者」としての人間を、皆さんと考える、私自身、考えさせられることが多かったし、いろんな方々からいただく「声」や「言葉」にはげまされ、共感の輪がずんずんと広がっていく実感から、今も、映画という形で「生きもののつながりの中で、生活者としての私たちの毎日を考える」きっかけとなるような試みを続けています。

 映画、映像、動画、あるいは番組‥‥‥呼び方によって、多少、期待される形や内容も異なりますが、何れにしても本質は、視覚と聴覚を中心に、一定の制約の下に再構成された時間と空間を擬似体験する媒体表現によって、ある種の経験の共有を広げるという営みに勤しんでおります。

 と、前回ここでも少々お伝えした、小学校で、食草園をつくる、という、昨年10月からおよそ半年間の営みを記録した短編映画を、先日、完成させました。これは、現状、このプロジェクトにご協力いただいた皆さん、〜 児童とその保護者の皆さん、先生方、庭師の方々ほか 〜 作り手として、まずは、これを一緒にこしらえた仲間とプロジェクトを共有する「春休み限定配信」として発信しています。「笑顔の里」という42分の作品です。小学校で、一コマ45分の授業およそ30時限をかけて取り組んだ「チョウを呼ぶ庭」づくり。中心となった5年生が、自分たちの手でこしらえて、徐々にできあがってきたこの庭に、思いを込めて、つけてくれた名前です。「『笑顔の里』 美しい生きものや 花がたくさんあり 小学校のみんなが 安心して 笑顔になるような場所を作りました。」二十四節気の「雨水」から「啓蟄」にかけて全校児童で植樹し、食草を植え、今は春、それが芽吹き始めたところです。ここ数日前から、チョウもヒラヒラと舞う姿も見られるようになりました(桜は今年は遅いようですが……)。

 さて、食草園をつくってしまったら、ここが始まりで、四季の変化を通じて、いろいろと手入れを続けていかなくてはなりません。それを、小学校の中で引き継いでいくことに加え、地域全体で、世代を超えて、「土と水と緑」を介することで、「人と人とのつながり」を紡ぎ出していくような「循環する庭」に、まち全体で取り組んでいけるしくみづくりを、と思って、今回のプロジェクトから、さらなる広がりを求めて、こつこつやっているところです。