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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2023.08.16

北海道まで暑いのは残念でしたが、農業科へ向けての熱気は嬉しかったです

このところ30周年を考え続けてきました。あまりにも問題がありすぎ、これからも考えないわけにはいきませんが、今日はちょっと話題を変えます。

7月末に、北海道美唄と札幌に行きました。福島県喜多方市で小学校農業科の活動が見事に行われていることはこれまでにも書いてきました。研究館の映画、「風と水と生きものと」にも喜多方の子どもたちが登場してくれています。農業科が始まったのは2006年、小学校の教育に英語とコンピュータを取り入れ、グローバル社会で活躍する人材を育てるという動きがあった時です。英語とコンピュータが不用とは申しませんが、主張する方たちに理念を感じられず、自然の中での生きものを実感する方が重要と感じました。株より蕪ですよねという私の言葉に反応して動いて下さった喜多方の市長、教育長、校長先生などの力で、思いがけず生まれた「小学校農業科」です。とても素晴らしいと視察する市町村はあっても、実現までは難しく、二番目が長い間生まれませんでした。

それが今年、美唄市で実現したのです。喜多方を訪れてこれまでの活動を学ばれたうえでの決断です。昨年美唄に伺い、議論に参加し、子どもたちが授業に使う本に思いを書かせていただくことになりました。「あなたが生きものであることを学ぶ農業」という題で。本は「美唄市農業科読本」となり、その中にある「生命誌絵巻」で生命誌の考えを皆が学んでくれます。

美唄での活動には、HAL財団理事長(元北海道副知事)の磯田憲一さんがサポートチームを作り、農業科を北海道全スタンダードにするという心強い発信をして下さっています。
私もチームの一員としてできることをやりたいと思っています。美唄と札幌で生命誌の考え方と、そこでの農業の意味、未来に向けての重要性などを聞いていただき、お仲間を少しづつ増やしていく努力をしてきました。

北海道も暑かったです。でも、頭上に空、目の前に緑が広がる2日間を過ごしながら、この異常気象から抜け出す道を作る出発点にいる気持ちになりました。30年を経て、生命誌は確実に求められ広がっています。
 

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶