表現スタッフ日記
2023.05.02
ベランダ食草園が誘う昆虫と植物のかけひきの妙
今の時期、毎年、ベランダのミカンに、いつの間のやら産みつけられた卵から孵化した幼虫が、ちょっと葉っぱ足りないねとの心配をよそに、もりもり育ち始めます。今年は、ちょうどミカンの開花と同時に幼虫が確認され、写真にあるように、葉っぱよりは花を食べて育っているようです。白いうんちがいっぱい確認されましたので。なるほど花びらは、葉っぱよりは柔らかく食べやすいでしょうし、ABCモデルを持ち出さずとも、そもそも葉と花にそんなに違いはないのかもしれません。
しかしながら、我が家のベランダの鉢の花も葉も数に限りがあります。アゲハのお母さんは、いつも、そこはあまり考えずにたくさん卵を産んでいかれるようですが、うちのベランダですべての子を養うには無理があるだろうという風に、想像力を持った人間の一人として、私は、思うわけです。
この時期、例年G.W.のいろいろなイベントで研究館ブース出展のお誘いがあり、昨年も、人気のナナフシと一緒に、ベランダ育ちのアゲハの幼虫にも出張いただき、そののち、食草園で自由に過ごしていただけるように致しました。今年もそんな風に、イベント会場でお仕事をしていただこうかなと思いながら、毎朝、ベランダで幼虫たちの育成具合を見ております。
わが家のベランダは、実は、小さな食草園になっています。昨年の夏から始まった記録映画「食草園が誘う昆虫と植物のかけひきの妙」の劇場上映で、要望に応じて、それぞれの劇場ロビーに小さな食草園を展示しましたが、そこで活躍した食草たちのうち、持ち帰ってベランダで育てているのが、ミカンを始め、カタバミ、ギシギシ、スミレ、パンジー、ネムノキ、タネツケバナにキャベツなどです。春になって、皆、がぜん元気を取り戻しています。
映画の方も、劇中の蝶々のように、昨年12月以降、越冬休眠モードでしたが、やはり蝶々が活動を始める春休み頃から、大阪、富山の劇場で上映いただき、たくさんのご来場をいただきました。そして7月には「ゆふいん文化・記録映画祭」という、非常に由緒正しい記録映画の祭典にご招待いただき、大変、光栄に思っております。
私が「食草園が誘う昆虫と植物のかけひきの妙」という記録映画をこしらえて、その鑑賞の場づくりをはたらきかけている由は、JT生命誌研究館という場の営みを通して、実は、皆さんの毎日の暮らしの中にある「小さな自然」に目を向けることが、お一人お一人にとっての「日常を豊かにする知恵」になるということに、共感いただきたいと思ってのことでした。
昨年の夏休みから始まった、映画館での、いわゆる興行としての上映は、この春でひと段落かと思っています。ご一緒いただいた劇場、上映会主催の皆様に心より感謝申し上げます。
しかし、本作は寿命を終えたわけではありません。むしろ、これから、さまざまな上映会や学びの場で、本作を上映、ご鑑賞いただける場を展開したいと考えています。秋には、都内の図書館で無料鑑賞会の予定もあります。そのような形で、本作にご関心を持っていただけましたら、どうぞお気軽に「村田@生命誌」宛お問い合わせください。ご連絡お待ちしております。
村田英克 (研究員)
表現を通して生きものを考えるセクター