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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2023.04.18

栗山監督の言葉に生命誌の願いを重ねて

3月は珍しく野球観戦を楽しみました。普段よく見るのはサッカーやラグビー。特にラグビーが好きです。ボールを取り合っている子どもがそのまま大きくなったような人たちが、ぶつかり合い、走りまくり……専門家に言わせればそんな単純なものじゃないと言われそうですが、オフ・サイドさえ知っていれば大丈夫じゃないかなと思いながら楽しんでいます。それ行けーと叫びながら。

野球は何だか間があって時間が長すぎるので見ないのですが、WBCは見てしまいました。確かに長かったですけれど、役者が揃っていましたし、点の入れ方にドラマがあり、ベンチの様子も面白く……楽しみました。とくに、これで負けたら終わりという準決勝と決勝は、フィクションでもこんなの書けないという勝ち方でしたから。その続きで久しぶりに応援団が活躍する高校野球も見ることになり、WBCとは違う楽しさを味わいました。

優勝後に栗山監督が、ロシアのウクライナ侵攻の中で行われたWBCでのチームづくりにこめた思いを語りました。とくにペッパーミルパフォーマンスやベンチ内での明るい言動で人気を集めたラーズ・ヌートバー選手を意識してのことでしょう。「生まれた国は違っても、日の丸の下に集まった選手が一丸となって戦うことで、地球に生まれた人たちが一つの人類であるという感覚を子どもの時に持てたら、戦争する気なんか絶対に起こらないと僕は思っている」と。

近年、さまざまなところでさまざまな仕事をしている人たちが、このような思いを持つようになっているように思います。一方で、くだらない覇権争いのために多くの人のいのちを奪ったり、人々の間に憎しみをはびこらせたりする困った人たちがいることも確かです。栗山監督の言葉、敢えて言うなら「日の丸の下で一丸」というのでなく「みんな仲間として集まった」という感じが好きですけれど、うるさいことは言いません。とにかくくだらない争いから人類は抜け出せるはず。生命誌はその願いをこめた知です。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶