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研究館より

表現スタッフ日記

2021.12.01

あたためて7年 「食草園」特設サイト

私がJT生命誌研究館(BRH)に入社したのが2016年の夏でした。その1年ほど前に、表現セクターの「サマースクール」に参加しました。丸2日間かけてたっぷり表現活動を体験するというプログラムで、その時に与えられたテーマが「展示『Ω食草園』から生きものの物語をつむぐ」でした。

食草園という場所は、私たちに身近な植物を育てている庭です。ミカン、クローバー、パンジー、菜の花…、植物に詳しくなくても、きっと誰もが知っているでしょう。この植物たちは、すべてチョウの幼虫の食草です。ナミアゲハはミカン、モンシロチョウは菜の花というように、チョウの食草は種ごとに異なっています。飛ぶことができず、動きもゆっくりな幼虫は、卵から孵った場所に自分が食べられる植物がないと生きていけません。チョウのお母さんは子のために、どのように食草を見分けて産卵するのか不思議です。BRHの昆虫食性進化研究室では、母チョウの前あしや幼虫の消化機能に注目して、チョウと食草の関係を調べています。

サマースクールでは、表現スタッフと研究室の尾崎さんらの導きのもと、当時の参加者(高校生から70代までの多様な4人)と一緒に、食草園を切り口にどんなことをどのように表現するのかを考えました。そして、食草園の景観や生きものを紙やモールで立体的につくり、一般の人にも親しみやすいモビールのようなオブジェをつくりました。どこにでもある植物を植えたどこにでもある庭から、生きものの研究と私たちの日常のつながりを表現する、ということがとても新しく感じられ、BRHの研究と表現にますます興味をもちました。

この経験をした1年ほど後、表現メンバーの募集あり、応募しました。その時の課題が「生きものの研究を多くの人が楽しめるよう表現するとしたら、どのような試みをしたいか」を考えてプレゼンすること。迷わず2つのアイデアが浮かびました。一つは、食草園のチョウと植物の関わりを例に、生きものの研究と私たちの日常のつながりを、意図せず自ら発見"してしまう"スマホアプリをつくり、生きものや生きているということを探求する過程をデザインするもの。もう一つは、展示のアイデアです。展示は、研究により明らかになったこと(成果)を伝えることが一般的ですが、わからないことに焦点を当てた展示もおもしろいのではないか。生きものに関する問いや不明なことを提示して、来場者とともに考え、一般の方と研究者がともにつくる展示をしてみたいと考えました。

当時の思いは、入社後もずっと変わらず持ち続けていました。そして、いつかは…という思いを、今年の夏WEBサイトとしてかたちにすることができました。食草園の特設WEBサイトです。みなさんの身近な自然、庭や公園で目にする生きものと重ねて、発見すること、問いをもつことのおもしろさをぜひご一緒に、と思っています。

食草園はふだんは中に入れませんし、ご覧いただいた時にチョウがいるとも限りません。食草園の展示前にも、タッチディスプレイを置き、WEBサイトで食草園のようすを見られるようにしました。ご来館の際はぜひご利用ください。2012年に食草園が誕生して以来、当時のスタッフが撮りためてきた写真もたくさん掲載しています。