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研究館より

表現スタッフ日記

2021.06.01

庭と畑とチョウ

緊急事態宣言のなか自宅にいる時間が多いので、見て見ぬふりをし続けてきた庭の手入れを始めました。1年ほど前、何も生えていない状態にしたのに、時間が経つにつれ一面みどりで覆われました。タネが残ったり、運ばれて来たりしたのでしょう。今の季節、雨が降った後の晴れの日には、一度に景観が変わったと感じるほど、植物の育ちに勢いがあります。

週末のたびに草取りをするのですが、週に1〜2度ではとても追いつきません。取っても取っても、カタバミやカラスノエンドウが生えてきます。集合住宅の2階に住んでいた頃は、どちらも道端で見つけると、黄色や紫色の小さなかわいらしい花に和み、摘んで帰って小瓶に挿して飾ることもありましたが、今は容赦なく抜き取ります。庭の端に繁茂していたススキやカラムシも半分ほど刈り取りました。

ところで、生命誌研究館の屋上の食草園はチョウのレストランです。チョウの成虫が密を吸う花と、幼虫が食べる植物(食草)を植え、チョウの訪れを待っています。と言っても、誰にも身近な草花と木を植えた小さな庭です。もちろん、私が自宅の庭で抜き取っている"雑草"たちも大事に育てています。カタバミはヤマトシジミ、カラスノエンドウはツバメシジミやルリシジミの食草です。ススキはセセリチョウ、カラムシはアカタテハが食べます。

自宅の庭の手入れを始めた頃に、チョウの食草は大事にしようと思いましたが、次々と生えるたくましさを目の当たりにし、取ることに躊躇がなくなりました。しかし、週末だけのずぼら草取りなので、食草を取り尽くすことはなく、畑の夏野菜と一緒に共存してくれています。

お隣の畑には、立派なミカンの木がありますし、菜の花やキャベツ、ミツバやパセリも育っています。ナミアゲハ、キアゲハ、クロアゲハ、モンシロチョウ、さまざまなチョウがひらひらと飛んでいます。とても可愛らしくすてきな景観ですが、畑にとってチョウは害虫です。私たちのトウモロコシの畝には「ここにはこないでね」とガを防除するネットをかけました。近所のおじいさんには「そんなんじゃ食べられる」と言われてしまいましたが。

人とチョウの関わりは、愛でる対象、害虫、研究対象、食物?など、多岐に渡りますね。それだけ身近な存在なのでしょう。興味も尽きません。今年の後半は、チョウと植物の関係を中心に、表現を通して考えてみようと思っています。