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研究館より

表現スタッフ日記

2020.10.01

形づくりはお得意ですか

吹く風が少しずつ冷たくなって、ようやく秋が実感できるようになってきましたね。さて、「生きもののつながりの中の人間」第二弾である、季刊「生命誌」103号が公開されて1ヶ月がたちます。ようやく秋めいてきて読書に最適な季節ですが、皆さんお楽しみいただいているでしょうか。少し遅いかもしれませんが、Research & Perspectiveの内容についてコメントを。

103号のテーマは多細胞動物の発生とゲノムの構造です。自分自身が高校生のころを思い返してもそうですが、高校生物の授業の中で発生は苦手だったという方は多いのではないでしょうか。様々な遺伝子がはたらいたり細胞が大移動して形が変わったりと、ダイナミックな現象が次々と起こる場であり興味深いはずなのですが、授業では結局、なぜこんな形になるの?どうしてこんな風に動くの?誰が動かしているの?という疑問を押さえ込んで、「原腸陥入」などの単語を丸暗記するしかなかったなあと思い出します。

そんな複雑で不思議な生きものの発生について、さらに複雑なメカニズムが分かってきた、というのが今回のお話です。私は発生の各段階の絶妙なタイミングで、きまった遺伝子がどうやってはたらけるのかが不思議だったのですが、線状の物質であるDNAの構造が柔軟に変わることでそれが実現しているようです。こうしたゲノムの構造変化は、さらに油滴のようなしずくで囲まれることで制御されているそうで、さらに驚きです。生きものの形が変わるとともに、核の中でゲノムの形がダイナミックに変わっていることを初めて知りました。

自己創出、つまり誰の手も借りず自身で自身をつくり上げ、続いてきたのが生きものです。誰もがそうやって生まれてきたはずなのにそれを覚えていられないことがもどかしく、どうやって自分は自分をつくりだしたのか知りたいと思ってきました。今回、自己創出する生きもののありようの理解に少しでも近づけたかな・・・という気がしました。これからは、苦手意識をもっていた発生の分野も楽しく勉強できそうです。