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研究館より

表現スタッフ日記

2020.03.02

受付カウンターの向こう側

今年に入ってから、生命誌研究館では小さな変化がありました。肺魚の水槽の前にある受付カウンターに、主に平日午前中、館内ガイドスタッフが交替で座っているのです。私もその一人で、初めは借りてきた猫の面持ちでいましたが、少しずつ慣れてくると、ここがとても大切な場所であるように思えてきました。

館内展示の案内スタッフである私は、普段はご予約いただいた方への展示ガイドや、土曜日のギャラリートークで来館者の方々との語り合いをしています。語り合い、といっても、展示の説明や研究の紹介など、伝えたいことがたくさんあり過ぎてついつい一方的に話をしてしまいます。もちろんその中でもご質問やご感想をいただいて、会話を楽しんでいます。

でも受付カウンターにいると、来館者の皆さまのほうからの語りを聞くことができるのです。お越しになったきっかけや、遠方からのご来館がやっと叶ったという思い、じっくりとご覧になった後のご感想、展示の奥深さに時間が足りなくなったという驚き、それぞれの言葉から、また言葉はなくても、小さなお子さまと一緒に興味深そうに展示をご覧になったりしている様子から、ここに詰まった中村桂子館長はじめスタッフのメッセージがしっかりと届いていることを実感できます。開かれた場である生命誌研究館のリアルの入り口である受付カウンターは、訪れてくださる方々の生の声のポストでもあります。

受付の仕事はそれだけではありません。郵便物や宅配物の受け取り、業者さんからの納品物の検収、お客様の取り次ぎなど、館の外と内をつなぐ中継地点です。おかげで、館内の今まで知らなかったことをたくさん知ることができましたし、ガイドとして所属する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフ以外の人とのコミュニケーションの機会も増えました。

こんな風に、まだまだ不慣れながらも楽しんでいますが、「受付」というとなんとなく「受付嬢」という言葉を連想してしまい、もうちょっと違う呼称がないかなぁと思ったりもするアラフィフの私です。

ウイルスや花粉など、小さなものがヒトを困らせている時節柄、受付でもマスクを着用していて、表情がよくわからず申し訳ありません。心の中ではにこにこしていますので、メガネのおばさんがカウンターに座っていましたら、どうぞお気軽に話しかけてください。

と、ここまで書いていたところで、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から生命誌研究館はしばらく休館することになりました。また、笑顔で皆さまをお迎えできる日がくることを心待ちにしています。

室園純子 (館内案内スタッフ)

表現を通して生きものを考えるセクター