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BRHサロン

超? 里山学!

日比伸子

奈良に来て、かれこれ7年半になる。仕事柄、ゲンジ(クワガタムシ)を採り、ホタルを撮り、あるいは池すくい(水生昆虫調査)をしながら、里山を歩く。野良仕事のおやっさんと何げない会話をしていると、時折、スゴイことを聞く。

たとえば、「田植えをしたら、ホタルが飛ぶ」と、さらりと確信をもって言う。こっちは呆気にとられるのだが、確かに、田植えをすると、その夜か翌晩に、ゲンジボタルが飛び始めるのだ。
 

里山でのびのび。

昆虫館で毎年開催するホタル観察会の日程は、3カ月前には決めなくてはならない。ケンジボタルの最盛期に実施したいが、3月初めに、初夏までの気候が確実に読める人がいるだろうか?少なくとも、私は自信がない。そこで、おやっさん登場。毎年3月になると、今年の田植えの時期を教えてもらう。“ここのホタルが6月○日頃に飛び始めるなら、観察場所では○日頃が見頃だ” と予想をたて、観察会の日時を決める。この方法で、これまで6年間、一度も外れたことがない。おやっさんの-言は、安心、確実なのである。

非科学的と言われようが、なんてったって、おやっさんは、先祖代々万葉の時代から、ず-っと、ここの生物と対等に付き合ってきたのだ。でないと、生きてこられなかったはず。

里山の生物は(もちろん人間も含めて)、個性的だからこそ関連性がある。混沌としているようで秩序がある。悠久の歴史があるからこそ現実的である。野良仕事のおやっさんの言葉や仕草には、生物全体を読み解く何かが存在している。一方、里山に生きる昆虫の生活史や行動には、人間に通じる何かが存在している。

こんなふうに考えると、“里山の自然誌は、超科学的なんや” と、誰かに語りたくなる。曼珠沙華が風に吹かれて咲いている。

(ひび・のぶこ/橿原市昆虫館)
※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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