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研究館より

ラボ日記

2021.10.01

クモの研究を始めて1年半

早いもので、私が細胞発生進化研究室に所属しクモの研究を始めて1年半くらい経ちました。所属した頃は、クモの種類は巣をはるタイプと走り回るタイプでしか見分けがつきませんでした。最近はクモを見かけると、どの科に所属するクモかぐらいは分かるようになってきました。ただ、種を同定するにはまだ図鑑は手放せません。今は私の自宅の玄関先にイエオニグモが毎日巣をはり替えているのを観察する日々です。

研究に関して、これまでは巣をはるタイプのオオヒメグモの胚発生を中心に研究してきました。現在は、走り回るタイプのアダンソンハエトリグモの胚発生も加えて研究を始めました(下図はそれぞれのメスの成体)。この2種のクモの違いは生活様式だけでなく、クモの形が作られる現場の胚発生にも見られます。オオヒメグモは球状の胚から円盤状の胚盤、そして帯状の胚帯へと形が変化します。一方で、ハエトリグモは球状の胚から、いきなり帯状の胚帯へと形が変わります。この2つの種の胚発生の仕組みの、どこが違い、どこが同じかを見つけることは生物実験のみでは意外と大変です。ここで私が研究に用いている数理モデルが役に立ちます。数理モデルの1つの利点は、違う種類のクモ同士でも比較的容易に胚発生の仕組みを比較して予測できることです。現在は、クモの胚の形状変化をコンピュータ上で再現することができ、オオヒメグモとハエトリグモで胚の形作りの同じ部分と違う部分も見えてきています。その結果を論文にまとめているところです。
 
 
オオヒメグモ(左)とアダンソンハエトリグモ(右)

藤原基洋 (奨励研究員)

所属: 細胞・発生・進化研究室

生物の形作りにおける物理背景、特に力学に興味があります。力学を基にした数理モデルを構築し、コンピュータ上でクモ胚の形態形成を再現することで、生物の形作りのルールを見つける研究を行っています。