表現スタッフ日記
表現スタッフ日記
展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
【生きものの世界を見て】
2009年2月16日
齊藤わか
 私は、大学では生態学を研究しています。地球上には多様な種類の生物がいます。彼らがどうやって自然界で共存しているのか、そもそもなぜこんなに多様な種が存在するのか、少しでも知りたいと考えたのが、生態学を始めたきっかけでした。生物の多様性を説明するときに重要なのは、生物が暮らす環境です。例えば水の中には泳ぎの得意な生きものが暮らしているし、陸上には歩いたり飛んだりするのが得意な生きものがいます。他にも、温暖な地域、寒冷な地域、砂漠、高山、深海―環境はたくさんの要因によって決定され、それぞれの環境に適した生物がいます。つまり生物の多様性を作る一因は、生物が暮らす環境の多様性であるといえます。
 しかし、環境の違いでは説明しきれない部分があります。水の中の魚と陸上の人間が、共通の骨格(背骨)を持っているのはどうしてなのでしょう。全く違う環境にいるものが、共通の性質を持っている必然性は無いはずです。では偶然なのでしょうか。答えは生物の進化の歴史を考えなくては導けません。進化の過程で、魚が持つ背骨をヒトの祖先が引き継いだという歴史的な経緯があるわけです。
 さらに、これらの条件を考えてもなお、説明できない生きものがいます。例えばイチジクは、花をつけないのになぜ繁殖できるのでしょうか。答えは花粉を運ぶイチジクコバチの存在にあります。他の生きものとの関わりを考えなくては説明できない例の一つで、生物同士のユニークな関係がさらに多様性を作り出しているといえます。
 このように、生きものが多様である要因は、環境や、進化や、他の生物との関係などさまざまです。私はこれまで、環境だけ見ていれば生物の多様性はだいたい説明できると考えていました。しかし、生命誌研究館でガイドをするようになってから、生き物の多様性は単独の要因で説明できるようなものではなく、もっと多くの視点から見る必要があるということを学びました。大学で生態学の研究に取り組む姿勢も、少し変わったかもしれません。これからも、多くのことを来館者の方と考え、学んでいきたいと思っています。

 [ 齊藤わか ]
戻る 次へ
表現スタッフ日記最新号へ
Javascriptをオフにしている方はブラウザの「閉じる」ボタンでウインドウを閉じてください。