生命誌について
2023.09.04
子どものための“どうぶつ会議”
こう
劇作家・平田オリザ氏が
生い立ちを語った記事の中に こんな話がありました。
幼稚園の卒園式の日に、園長先生が一冊の絵本をくれた。
ドイツの自由主義者・ケストナーの“どうぶつ会議”
世界中の動物が集まり、戦争を繰り返す愚かな人間を戒める作戦を
練る物語で、世界平和を真正面からではなくユーモアとペーソスを
持って描いていてフィクションの力というものを思い知ったのは
これが初めてだった。
この話に関心が湧き 早速この本を手にしますと
第1刷が戦後少し経った1954年で、昨年30刷ですから
70年近く増刷されてきて、今も小さな子どもを持つ親の中には
この本を与え続けていること、そのことにも印象が残りました。
2023.09.05
1. 中村桂子(名誉館長)
こうさま
「平和」を特別のものにすると、単なる理想になり、平和ボケなどというとんでもない言葉まで生まれてしまいますので、平和は日常なのだと言い続けるお仲間になって下さい。
ケストナーの「動物会議」は愛読書で、毎日新聞の書評欄にある「私の一冊」という欄を書いた時もこれを選びました。大人たちが戦争を止められない人間を見て、「子どもがかわいそうだ」と思った動物たち。人間の一人として恥ずかしい限りです。心を入れ替えて、子どもの笑顔だらけの社会にしなければいけませんね。
中村桂子
2023.09.14
2. こう
中村桂子先生
どんな言葉を意識して暮らしているか。価値観によって様々でしょうが
私は年を重ねてくると、一日が明け、一日が暮れる、一日を一生とした言葉を
意識し始め、その日が暮れるとき 今日も“平穏・無事”でいい日だったと、
変わった事がないことは当たり前で何も考えなかった若い頃とは一変しました。
よく知られている“日々是好日”の言葉が頭に浮かぶと
なんだかホットで、プラス思考になったような気になるのも不思議です。
2023.11.10
3. ゆずりん
こうさん、動物会議の本のご紹介をありがとうございました。
中村桂子先生の愛読書と聞き、嬉しく思いました。
今こそ「動物会議」を
多くの人に知ってもらいたいです。
今のガザ地区の子供たちの惨状をテレビやSNSでみると
何もできない自分が歯痒いばかりです。
このまま戦争が拡大していくと
本当ににこどもがいなくなってしまうのではないかと危惧し
空恐ろしくなってきます。
私でも何かできることがないかと考えています。
大きな理想ですが
自身は衣食足りてると感じている全世界の方々に
この本を読んでもらいたいです!
この本は色々な国で翻訳されていると思います。
(アラブの世界ではどうなのでしょうか?)
何か良い方法があると良いのですが。あきらめずに考え行動できれば
いいのですが…。
2023.11.14
4. こう
ゆずりん様
コメントに眼を留めて頂きありがとうございます。
この絵本をくれた園長さんは、駒場幼稚園の鹿野京子先生。
当時、幼児教育でちょっと知られた人だったようです。
平田オリザ氏のこのお話で、もうひとつ 良かったと感じたことは
“幼児への良い話”は、これからその子がどんな風に育っていくか
“大切な成長のための花粉になる”ということを教えられたことです。
その花粉は受粉しないかも知れないし、発芽しないかも知れませんが
植物の発芽率なんて極めて微少でしょうから、そんなことは気にかけず
何十年かの生活経験を持つ私たちは、子どものための良い話・良い言葉を
よくよく考え・話していく意識を常に持っていることが大切で、そのこと
が私たち自身のこれからをより確かにしてくれると思いましたし、日頃の
こんな意識と行いが、生命誌の示す“人という生きものの基本的な営み”
の中でも特に大切なことと気づきました。
2023.11.14
5. 中村桂子(名誉館長)
ゆずりん様
「動物会議」をお読みくださったとのこと、ありがとうございます。
私がありがとうと言うのもおかしなことですが、今社会を動かしている大人全部に読んで欲しいと思っているものですから、同じ考えをお持ちと知ってついお礼を言ってしまいました。本当に辛かった戦争の体験を踏まえて書かれたこの本が、「子どもたちがかわいそう」というところから始まっていること、動物たちの賢さを活かしていることなどには大事な意味が込められています。
今はこのような本がたくさん書かれてよい時です。文学には力があるはずです。もちろん科学にも。戦争の方を向いてはいけません。ケストナーに学ばなければと思います。
中村桂子