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みんなの広場

研究

2020.09.11

改めて進化の不思議さを感じた

ニール・オールド

「チョウが食草を見分けるしくみを探る」は、幼虫が特定の植物のみを餌にすること、メスの成虫が口ではなく前脚で味を感じている事等知らないことばかりでとても興味深かったです。そもそも例えばナミアゲハとミカン科の植物という関係は、どのようにして決まったのでしょうか?多分ナミアゲハの生息地域にはミカン科の植物が多かったのでしょうが、最初はもう少し違った植物も食べることが出来たのだと思います。そして理由はわかりませんが、次第にミカン科に絞り込まれていったということなのではないのでしょうか?もしそうでしたら、ミカン科の植物を食べることが出来る遺伝子を持つ幼虫だけが生き残ったということになるので、「幼虫がさまざまな植物の解毒機能をもつことは無駄が多いとだろう」という説明は少し疑問に思いました。どちらにしても、改めて進化の不思議さを感じたことは間違いありません。

※8月の生命誌の催し「研究者の目で生きものを見てみよう 」にお寄せいただいたご質問、ご感想です。

2020.09.11

1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)

深い考察をされていて、興味深く拝見させていただきました。

ナミアゲハがなぜミカン科に特化しているのかについては、「祖先種が利用していた植物に、ミカン科植物が持つ化合物の組成が似ていたため」というのが当研究室としての仮説になります。では、祖先種がなぜその植物を利用していたのか?と遡ると、謎が深まります。鱗翅目昆虫(蝶と蛾の仲間)の多様化が、約7千万年前に始まった被子植物(花をつける植物)の多様化と重なるので、そのような進化の歴史の中に謎を解く鍵が隠されているかもしれません。

アゲハチョウの幼虫は移動能力が低いので、昨日はあの植物を食べたけど、今日はこれにしよう、といった感じで気分によって餌を選ぶということはできません。基本的には決まったものだけを食べて蛹になるまで成長します。そうなると、色んな植物に対応できるように色んな解毒機能を用意していたとしても、その一部しか使わずに生涯を終えることになりますので、一世代の中で考えると使わずじまいになった解毒機能は無駄になってしまいます。そんな無駄を出すよりは、最初から決まったものだけを食べることにして、不要な解毒機能を作っていた労力を別のものに割り当てた方が効率が良いのではないかと考えられています。このように、生物一個体が持てるエネルギーには限度があるので、どこかを強化するためにはどこかを減らすといった調整が必要になります。このような調整のことを「トレードオフ」と言います。限られたエネルギーの割り振りが必要になりますので、苦手な部分がないスーパースターのような生物にはなれないと考えられています。

さらなる考察をされる上で、ご参考になりましたら幸いです。

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