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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【本棚を見て思うこと】

浦川哲生 ときどき、古本屋さんに行って生きもの関係の本を探してみると、思い掛けない出会いがあります。『細胞の分子生物学』や『生物学辞典』など、普段お世話になっている本がどういう変遷を辿ってきたのかはちょっと気になるもので、異なる版を見つけるとついつい手に取ってしまいます。でも意外に高くて手が届かなかいことも多いですね。大学図書館にはこういった基本文献は古いものから新しいものまで、ときどき閉架行きになっていることもありますが、だいたい一揃いは置いてあります。試験やレポートで使うとき、最新版が貸出になっていて大変残念な思いをしたことも何度かありますが、差し迫った用途でないなら、昔の版を見て、ああ分子生物学ってこんなに真っ白だったのかと感じてみると楽しいかもしれません。
 大型書店や古書店にいくと文学や社会学では著書全集がよく棚に並んでいます。一方、生物学者で著作全集が近所で手に入るのはアリストテレスくらいですよね。バラになるとドーキンスのような行動学の先生の著作も見かけます。ただ、分子生物学となると…。デルブリュックなど物理学出身の人、ジャコブなど医学出身の人、モーガンなど動物学出身の人ではものの見方や依って立つところがずいぶん違うはずです。そう思って和訳本を探してはいるのですが、分子生物学の大先生が単独で書いた著書は、書店でもなかなか見かけませんし、図書館にもよほど揃いの良いところでないと置いていません。教科書に名前が載るような分子生物学の大先生で、著書が最も簡単手頃に手に入るのはワトソンですが、その次となると…シュレディンガーでしょうか?誰の手で発見されても真実が影響を受けることはないから得られた真実だけを記録すればよい、という意見はその通りかもしれませんが、どこから始まりどういう紆余曲折があったかを生々しく伝える記録がないと、その次にどんな流れが出てきそうか予想がつきにくくなるのではないかなという気もします。新しい展示を仕込む中で館の以前の資料を読みながらそんなことを考えました。

 [ 浦川哲生 ]

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