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表現スタッフ日記

展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生きものと表現に関心のある者たち】

村田英克
 SICPでどんな人が働いているかと言うと、(1)生物系の修士課程以上を経験して表現に関心のある者。(2)生物学は専攻していないが生物に関心があり、表現を得意とする者。のいずれかで、現在のチーフ・スタッフも概ねどちらかに分類可能です。上記は過去のスタッフ募集要項の応募資格からの引用でしたが、ついでに引くと、「生きものの研究を多くの人が楽しめるように表現するとしたらどのような試みをしたいか、図または400字程度の文章でまとめたもの。」という記載が提出書類の第3項に定めてあります。このセンテンスの前半は、スタッフの一人として、季刊『生命誌』の年刊テーマを考える時、取り上げる著者選定を行うとき、各展示・映像等の表現を進めるとき、いつも館長から問われる「あなたがやりたいことは何?」「やりたいならおやりなさい(もちろん責任をとりなさい)」という言葉に通底しているし、後半の「図または400字程度の文章でまとめ」る作業こそ、まさに私たちの日々の行いそのもの。伝えたい内容や事象が、どんなにかすばらしく、あるいは、どれほど複雑であったにしても、だいたいこれくらいのスペックに圧縮できなければ、伝わるものにならないでしょう。
 ところで、ここの組織の良いところは、少ない構成要素によってその働きが支えられているがゆえに、階層も少なめに抑え、全体としてあまり構造を複雑にしないでも成り立つところにあると思う。詳細な設計図面に基づきモジュールごとに決まった機能を分担する正確な装置であるよりも、状況を機敏に捉えて柔軟に、時に奇想天外にふるまう動態であり続けたい。そのためには、個々がニュートラルな状態をデフォルトに持ち多面的に相転換する何でも屋であることが求められます。その上での「あなたがやりたいことは何?」です。
 ところで、SICP構成員は2種類に分類されると言いましたが、実際には、各々、相当に独自性が高い。知識・経験それぞれに専門性や強みがあるが、これは裏腹で、同時に知らないという強みもあると思う。行動する、表現する、実践するというレベルでは特にそうで、知っていることが足枷となるとはよくある話だ。だから専門性は時として弱みともなりかねない。しかし何でも屋の相互作用がうまく機能すれば、そこから新しい形が生まれてくるだろうと、ここは楽観的に考えます。
 さて、今年のサマースクール(8月7日、8日)、SICPセクターは「1枚のカードに研究の思いを詰め込もう!」というテーマに取り組みます。もちろん具体的な題材としては、こちらでもう少し枠組みを設定しますが、その中で、あなたも、図と400字でまとめた文章を念頭に、生きものの研究を多くの人が楽しめるように表現してみませんか。応募の締め切りは7月4日(必着)です。

 [ 村田英克 ]

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