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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【見ることが始まり】

小田広樹

 今年のサマースクールで私たちの研究室は、ショウジョウバエの体を作っている細胞を観察しました。参加者が自分で顕微鏡を使って観察を楽しんでもらえればそれでいいと思っていましたが、それでも内心、「見る」ことの重要性を分かってもらいたいという気持ちもありました。
 生物学の研究において、「見る」ことは基本であり、進歩には欠かせません。歴史的にも、光学顕微鏡ができて細胞の存在を知り、電子顕微鏡ができて細胞の中の様々な構造を知り、ビデオ録画が出来るようになって細胞のふるまいを細かく追跡することが出来るようになりました。見る方法が新しく開発されると、それを用いた観察によってそれまで見ることのできなかった構造や現象の発見につながるのです。
 サマースクールでは、異なる3種類の蛍光色素でショウジョウバエの組織を染色して、CCDカメラの付いた蛍光顕微鏡で3種類の蛍光色素をフィルタを変えて別々に検出しました。コンピューター上でそれぞれの像に赤、緑、青の色をつけて重ね合わせてカラー写真ができ上がりました(下の写真)。このような観察方法は蛍光検鏡法と言われていて、タンパク質など、小さくて直接は見ることの出来ない分子が細胞のどこに存在しているのかを調べたり、分子と分子の位置関係を調べたりするのによく使われます。
 サマースクールの参加者も、「見た」ことによって生物に対して新しい疑問が湧いたのではないかと思います。


アクチン繊維
カドヘリン(細胞膜)
DNA
 
ショウジョウバエの卵巣を蛍光色素で染色したもの by Shigetomi


[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 研究員 小田広樹]

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