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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

バックナンバー

バックナンバー 【単純作業】

吉田昭広
 前回「チョウのハネの周りに感覚器がたくさんあることがわかった。」とお話しました。その後さらに詳しく調べたところ、当時考えていたよりもずっとたくさんの感覚器のあることがわかってきて、あらためて驚きを募らせています。 チョウはハネの周りの感覚をどのように利用しているのでしょうか?それを明らかにしていくには、まずハネの周りの「どのあたりに」「どのくらいの数の」感覚器が分布しているかを正確に調べることが重要なことの一つです。しかし、ハネの周りには細長い鱗粉が密集していて、その中に小さな感覚器がたくさん隠れてるため、研究は一筋縄ではいきません。以前は、それをきちんとやり遂げることはとても不可能だと思っていたものですが、共同研究者の先生方が行って下さった実験がきっかけとなり、いくつかの工夫を加えながら、今はかなり正確な結果 が得られるようになりました。わかってみると、予想以上の多さに驚かされたというわけです。研究に使ったのはモンシロチョウです。ハネの周りから「邪魔な鱗粉」を除いていく作業、数百枚の電子顕微鏡写 真を撮り、それをたんねんに調べていく作業、顕微鏡を直接のぞいて判断していく作業などを、研究室のメンバー2人で根気よく行いました。一つ一つの作業は単純なものばかりですが、今のところいちばん正確な結果 が得られる手順を踏んでいる、と自負しています。
 大学院生だった頃、主に物理化学や生化学の手法(および理論的な手法)を用いる研究室にいましたが、(数字として現れるデータを取るときでも)対象を目でしっかり見ることの重要性、できるだけシンプルで確実な方法を用いることの重要性なども教えられたように思います。そんなことを思い出しながらの単純作業でした。


[チョウのハネの形づくりラボ 研究員 吉田昭広]

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