中村桂子のちょっと一言
2024.11.15
思いがけない出会い
高知県檮原町へ行ってきました。「雲の上の町」と称しているように、四国山地の山間地帯にあり、236㎢ほどの町の91%が森林です。人口は3105人。都会ですと、一つのマンションでこのくらいになりそうですね。東京で生れ育った私も、広い空の下の緑の山なみ、畑の中に点在する家々などを見ると、故郷に来た感じがするのが不思議です。心が落ち着きます。
異常気象という形での自然の変化、戦争が象徴する分断社会の深刻化などを見ると、自分たちで食べものを作り(農業)、自然を活かした住居を作り(林業、土木、建築)、生きものとして生きていく人間を育て(教育)る社会にしなければ、未来はないと思えます。
梼原は、そのすべてがしっかりとある町でした。山間の小さな町が多い高知県は、歴史のある集落を拠点として「集落活動センター」を作るという政策をとっているのですが、それを活用して、地域のお年寄りが(高齢化率はほぼ50%)川魚のアメゴの養殖をしたり、地域の桑の葉を活用したシフォンケーキを作るなどの活躍をしています。畑に害を及ぼすシカやイノシシを捕獲しての「ジビエの里」では、若い方が活躍していました。
教育も素晴らしく、小中一貫校と県立高校があり、「18年間で子どもを育てる」という体制を作っています。県立高校には寮があり、町外はもちろん、県外(東京や神奈川も)からの生徒さんもいます。皆楽しそうで、「寮のご飯美味しいんです」と言っていました。
今都会では追いつめられた感じの若い人が多くなっているように思い、ここでのようなほんとうの暮らし(賢治の言うほんとうです)で、ゆっくりこれからを考えるとよいのではないかと思いました。
実は、驚いたことがあります。梼原には隈研吾設計の木で作った図書館があります(隈さんが若い頃のもので、ここで木への目が開かれたと言われています)。建物もなかなかですが、内容と運営が魅力的です。飲食も会話も許されているのがよいと高校生が言っていましたが、皆が節度を持って使っているのでしょう。
そこになんと「生命誌絵巻」が飾ってあったのです。本当にびっくりしました。「コレクション」まで含めて私の本を置いて下さっているのも嬉しかったのですが、やはり一番は絵巻です。これの意味を認めて考えて下さっている方がいらして、しかも図書館に置いて下さるとは・・・。
このような形で広がるのが生命誌のほんとうの姿かなと、しみじみと考え、どこかに同じような町があるといいなとちょっと欲張ってしまいました。
異常気象という形での自然の変化、戦争が象徴する分断社会の深刻化などを見ると、自分たちで食べものを作り(農業)、自然を活かした住居を作り(林業、土木、建築)、生きものとして生きていく人間を育て(教育)る社会にしなければ、未来はないと思えます。
梼原は、そのすべてがしっかりとある町でした。山間の小さな町が多い高知県は、歴史のある集落を拠点として「集落活動センター」を作るという政策をとっているのですが、それを活用して、地域のお年寄りが(高齢化率はほぼ50%)川魚のアメゴの養殖をしたり、地域の桑の葉を活用したシフォンケーキを作るなどの活躍をしています。畑に害を及ぼすシカやイノシシを捕獲しての「ジビエの里」では、若い方が活躍していました。
教育も素晴らしく、小中一貫校と県立高校があり、「18年間で子どもを育てる」という体制を作っています。県立高校には寮があり、町外はもちろん、県外(東京や神奈川も)からの生徒さんもいます。皆楽しそうで、「寮のご飯美味しいんです」と言っていました。
今都会では追いつめられた感じの若い人が多くなっているように思い、ここでのようなほんとうの暮らし(賢治の言うほんとうです)で、ゆっくりこれからを考えるとよいのではないかと思いました。
実は、驚いたことがあります。梼原には隈研吾設計の木で作った図書館があります(隈さんが若い頃のもので、ここで木への目が開かれたと言われています)。建物もなかなかですが、内容と運営が魅力的です。飲食も会話も許されているのがよいと高校生が言っていましたが、皆が節度を持って使っているのでしょう。
そこになんと「生命誌絵巻」が飾ってあったのです。本当にびっくりしました。「コレクション」まで含めて私の本を置いて下さっているのも嬉しかったのですが、やはり一番は絵巻です。これの意味を認めて考えて下さっている方がいらして、しかも図書館に置いて下さるとは・・・。
このような形で広がるのが生命誌のほんとうの姿かなと、しみじみと考え、どこかに同じような町があるといいなとちょっと欲張ってしまいました。
中村桂子 (名誉館長)
名誉館長よりご挨拶