今号テーマ
生命誌の時間
今号は、現代の生命科学を含め、生きものを扱う学問がこれまでどのような形で「生きている」ことを捉えてきたのかを考えます【PERSPECTIVE】。生きものの科学は、自然を記載する「自然誌(Natural History)」に始まります。やがて生物と無生物を区別し、動物と植物を共に生きものとして見る「生物学」の視点が生まれ、生きものの共通祖先の想像から、進化の考えが浸透していきました。20世紀後半、遺伝の実体である細胞の中のDNAが分析できるようになり、それまで仮説で語られてきた進化やさまざまな生命現象を、今では分子レベルで解析することができます。理解が進めばまたわからないことがみつかりますが、人と人との関わりのなかで科学は進歩します。それを生きた知恵にしていくのが生命誌です。
ヒトゲノム計画が始まった1990年代、人間も含めて生命とは何かを考えることが必要であり、科学で生命現象を捉えた上で、生きものとしての人間を考えるところから始めようという思いから生まれたのが、「生命誌研究館」です。【SYMPOSIUM】では、研究館が30周年を迎えた今年、中村桂子名誉館長が研究館の活動を振り返り、生きものの研究と表現を通して研究館が大切にしてきたことを改めてお伝えします。
私たちはこれからも、生きものたちが教えてくれる事実を大切に研究し、表現していきます。「人間は生きもの」というあたりまえのことを、科学が明らかにした事実をもとに再確認する知を創ります。
研究館は、
創立30周年を迎えました
科学のコンサートホールとして、独自の研究と表現に挑戦してきました。
その足跡を振り返り、これからの館のあり方を考えます。
まずは東京での催し(2023年5月27日開催)からのご報告です。
シジミチョウ科
ヤマトシジミは人家周辺でよくみられるシジミチョウ科のチョウで、カタバミを食草とし ます。ツバメシジミはヤマトシジミによく似たチョウですが、後翅にある尾状突起(びじょうとっき)と赤い斑点が特徴で、シロツメクサなどが食草です。どちらも、翅の表面は雌雄で異なり、オスは鮮やかな青色部分が広く、見分けることができます。小型で、地面近くを飛ぶことが多いので目に留まりにくいですが、時には足を止めてシジミチョウを探してみてください。
PAPER CRAFT