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分子-細胞から 種-生態系に広がる世界 30周年公開シンポジウム ゲノムが紡ぐ生きものの個性と関係性

詳細

日時

2023/10/01(日) 9:45〜15:50(開門9:10、受付開始9:15)

場所

【現地開催】 JT生命誌研究館 1F
【ライブ配信】 JT生命誌研究館 ホームページ

出演者

(五十音順)
秋山‐小田康子(JT生命誌研究館)
市橋伯一(東京大学)
尾崎克久(JT生命誌研究館)
小田広樹(JT生命誌研究館)
河野暢明(慶應大学)
藤原晴彦(東京大学)
古澤力(理化学研究所、東京大学)
吉田聡子(奈良先端科学技術大学院大学)

主催

JT生命誌研究館

参加方法

参加無料 ※本シンポジウム講演は専門性の高い内容です。
【現地開催】予約制です(定員100名)。
【ライブ配信】当日このページでライブ配信を行います。ライブ配信の視聴は予約不要です。
※場内を撮影いたしますので、ご了承ください。

内容

当日の内容を季刊「生命誌」115号でご報告しています。


開催ポスターはこちら

企画趣旨

生命誌30年、はじまりは遺伝子の構造とはたらきが垣間見えてきた頃。
今、ゲノムの情報を得ようと思えば得られる時代、どんな生物種であっても。
色々な生きもののゲノムが読まれれば読まれるほど、生きものがそれぞれ違うのだ、と知らされる。

ゲノムに基づいた発展で、違いを挙げ連ねることは簡単になった。
しかし、違いを理解することは難しい。
「違い」は個性を生み、関係性を育む。
数学、物理学、化学、工学など、あらゆる学問を総動員して、「違い」を深く理解したいと思う。
その先に、生きものの本当の面白さが見えてくる。
 

※本シンポジウム講演は専門性の高い内容です。

プログラム

(9:10) 開門
(9:15) 受付開始
 
9:45-9:50 館長よりご挨拶
9:50-10:00 趣旨説明
 
<分子が支える生きものの個性>
10:00-10:20 細胞をつなぐ構造と仕組みが生む多様性」 小田広樹
10:20-10:50 動物の道具を人間が借りるには」 河野暢明
 
<細胞世界に生まれる個性と関係性>
10:50-11:10 細胞がつくるパターンの動的変化」 秋山‐小田康子
11:00-11:40 実験室で進化を観察する~進化の予測と制御へ向けて~」 古澤 力
 
<壇上談話会>
11:40-12:10 河野暢明・秋山-小田康子・古澤 力・小田広樹(ファシリテーター)

ー昼休憩ー
 
<生きものの個性と関係性の起源>
13:20-13:50 進化実験が分子生態系を生み出した」 市橋伯一
 
<ゲノムにコードされる個性と関係性>
13:50-14:20 メスだけが擬態するアゲハの不思議」 藤原晴彦
14:20-14:40 アゲハチョウ: 親の好き嫌いと子の事情」 尾崎克久
14:40-15:10 ゲノムから読み解く寄生植物の適応と進化」 吉田聡子
 
<壇上談話会>
15:10-15:40 市橋伯一・藤原晴彦・吉田聡子・尾崎克久(ファシリテーター)

15:40-15:50

結びのご挨拶
 

講演概要

〈分子が支える生きものの個性〉

「細胞をつなぐ構造と仕組みが生む多様性」 小田広樹(JT生命誌研究館)

私たち動物の体はたくさんの細胞がつながってできている。どの動物においても、細胞をつなぐためにカドヘリンと呼ばれる分子がはたらいているが、カドヘリン分子の長さが動物の系統によって異なることがわかってきた。祖先の状態は長く、より進化した状態は短い。そこに見える動物進化の向きは何を意味するのか。この問題を元に、私たちが具体的に知りたいことは主に2つ。1)原始の動物においてどんな仕組みが細胞をつなげていたのか? 2)細胞をつなぐ仕組みの変化がもたらした動物進化への影響は何かあったのか? 本講演では、これらの問いへの私たちの取り組みを紹介したい。

 「動物の道具を人間が借りるには」 河野暢明(慶應大学)

自然界には、枯渇資源に依存しない動物由来の天然素材が多く存在しており、環境負荷の少ないマテリアルとして循環社会への貢献が期待されている。特にクモやカイコの糸に代表される構造タンパク質はアミノ酸配列を改良し、微生物に生産させるだけで既存材料からはなし得ない高機能物性を自在に生み出すポテンシャルを秘めた革新素材である。しかし人類はまだ、天然素材を人工的に利用しきれていない。その主な理由は、どのようなタンパク質の種類でこの天然素材が合成されているのか、その因子や行程がほとんど解明されていないためである。そこで我々はゲノム、遺伝子、タンパク質などを網羅的に解析するマルチオミクスアプローチを用い、節足動物の分子情報を徹底的に解明し、基本材料カタログを整備することで、ノウハウの蓄積を目指した。本講演では、天然素材を自在デザインする破壊的イノベーションの未来に向けた取り組みを紹介する。


〈細胞世界に生まれる個性と関係性〉

「細胞がつくるパターンの動的変化」 秋山‐小田康子(JT生命誌研究館)

動物の胚発生は、多くの場合、1つの細胞である受精卵から始まる。細胞は増殖し、形をつくり、分化する。胚で遺伝子発現を可視化すると、このような体づくりの基となる見事なパターンが浮かび上がる。生物のゲノムにはパターンを形成するための情報が書き込まれているが、情報の詳細や生物による違いはまだよく分かっていない。私たちはオオヒメグモ胚をモデル系として解析し、頭尾軸と関係する同心円状のパターンや体節の基となる縞状のパターンが細胞のダイナミックな変化により形成されることを見出した。本講演では、クモ胚におけるパターン形成のしくみやショウジョウバエとの違い、しくみの理解に向けた単一細胞解析による取り組みを紹介する。

 「実験室で進化を観察する~進化の予測と制御へ向けて~」 古澤力(理化学研究所、東京大学)

さまざまな環境変動に対して、進化によってその状態を変えていく能力は、生物システムが持つ本質的な特徴の一つです。ただしこの進化のダイナミクスは無制限に変幻自在ではなく、その変化を制約する何らかのルールの下にあると考えられています。こうしたルールは、過去に生じた進化の結果を観察するだけでは、理解することが困難です。そこで我々のグループでは、微生物をさまざまに異なる環境下で培養することにより、そこで生じる進化ダイナミクスを解析しました。遺伝子発現量やゲノム配列の変化を調べることにより、微生物の表現型進化が従うルールを明らかにしようとしています。今回の講演では、そうしたルールをどのように見いだし、それに基づいた進化の予測と制御がどのように可能であるかについて議論します。


〈生きものの個性と関係性の起源〉

「進化実験が分子生態系を生み出した」 市橋伯一(東京大学)

生命は、単純な自己複製分子(群)がダーウィン進化を繰り返したことで生まれたと想像されている。しかし、本当に単純な自己複製分子が進化するだけで多様で複雑な生きものへと近づいていくことができるのだろうか?私たちはこの疑問に答えるために、進化する能力を持つ分子システムを構築し、実際に長期の進化実験を行っている。これまでの結果、単独の分子種のみの進化では不十分だったが、寄生型の分子との共進化が起こると、分子種は自発的に多様化し、相互依存的なネットワーク(いわば分子の生態系)を生み出すことを見出した。生命の特徴である多様性や複雑性を生み出すカギとなったのは寄生体との共進化かもしれない。


〈ゲノムにコードされる個性と関係性〉

「メスだけが擬態するアゲハの不思議」 藤原晴彦(東京大学名誉教授)

沖縄などに生息するシロオビアゲハなどはメスの一部(擬態型)だけが毒蝶のベニモンアゲハに擬態するが、オスや非擬態型のメスは全く異なる模様を示す。「なぜメスだけが擬態するのか」、「なぜ2種類のメスがいるのか」といった疑問はダーウィンやウォレスの時代から興味がもたれていたが、その原因は最近まで不明だった。蝶のゲノム解読や遺伝子の機能解析から、擬態型メスの形質は1カ所に集まった遺伝子群(超遺伝子、supergene)によって制御されていることが判明した。超遺伝子は魚や鳥など様々な動植物の複雑な適応形質を制御していることもわかりつつある。遺伝子の機能や染色体の構造から明らかになったアゲハの擬態や超遺伝子の不思議について紹介したい。

「アゲハチョウ: 親の好き嫌いと子の事情」 尾崎克久(JT生命誌研究館)

アゲハチョウの成虫は花の蜜を飲みます。花の種類は選びません。幼虫は特定の植物を食べます。これは、植物が用意した防御のしくみを乗り越える必要があるためです。しかし、幼虫の移動能力は限られているので、自力で餌を探し回ることは難しいのです。そこで、飛ぶことができる成虫が、植物を食べることはないのに幼虫に代わって植物を選んで卵を産みます。メス成虫は前脚で触って“味見”をして、美味しいと思う植物を選びます。
アゲハチョウの仲間は完全変態の昆虫なので、成虫と幼虫では全く異なる形と役割を持っていて、植物との関わり方にも違いがあります。アゲハチョウたちが植物を選ぶしくみを読み解く研究を紹介します。

 

「ゲノムから読み解く寄生植物の適応と進化」 吉田聡子(奈良先端科学技術大学院大学)

一般的な植物は、緑の葉を広げて光合成をおこない、大地に根を張って水や養分を吸い上げて生育しますが、寄生植物は、他の植物の中に入り込み、栄養の輸送経路である維管束を乗っ取って栄養を得ることができます。寄生植物には、ごく普通の植物と同様に光合成をしながら日和見的に寄生するものから、ラフレシアのように根や葉を失って栄養源を完全に宿主に依存するものが存在し、寄生能力を獲得した植物が、宿主への依存度を増すにつれ、植物らしさを失ったという進化の過程が考えられます。近年のゲノム解析から、寄生植物が効率的に宿主を見つける手段を獲得し、寄生生活に適応してきた様子が明らかになってきました。本講演では、ハマウツボ科寄生植物の研究を中心に、寄生植物の適応と進化について紹介します。

ご参加方法

ご参加は予約制です。下のボタンよりお申し込みください。

受付終了

 

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