食草園が誘う
昆虫と植物の
かけひきの妙
研究館の屋上展示「Ω食草園」では、チョウの成虫が蜜を吸う花と、幼虫が食べる植物を育て、チョウの訪れを待っています。本展では食草園を訪れる、私たちに身近な昆虫と植物の間でくり広げられる“かけひき” を特集します。たくさんの発見と新しい問いが次々と生まれる、驚きに溢れた世界です。
- 期間
- 2021731226
- 場所
- JT 生命誌研究館
企画展エリアマップ
食草園特設サイト
Ω食草園
生命誌研究館の屋上展示「Ω食草園」では、チョウの成虫が蜜を吸う花と、幼虫が食べる植物を育て、チョウの訪れを待っています。この“チョウのレストラン”を味わい楽しみ尽くす、新しいWEBサイトが新オープンしました。食草園でのできごとは、みなさんの家の庭や公園や道端の草花、街路樹など、身近な環境につながっています。一緒にチョウの生命誌を楽しんでみませんか。
メインホール 感じる・応じる 昆虫と植物
昆虫は地球上で最大の種族です。その繁栄ぶりを植物との関わりから読み解くと、蜜花を見抜く鋭い知覚、植物にとけこむ擬態、枝葉につくる虫こぶなど、そんな生き方があったのかと、その底知れぬ強さと柔軟さに驚きます。一方、植物は昆虫のように動きません。しかし動かないからこそ、自らを守り、時には攻める、植物ならではの生きる工夫が見えてきます。昆虫と植物、一方だけが得をするのではなく、お互いが利を得るために、いかに巧妙なかけひきがなされているのか、お楽しみください。
01 植物でつくる幼虫のゆりかご そのつくり方は?
昆虫の中には、植物の成長過程そのものにはたらきかけて、自分に好都合な「虫こぶ」という器官をつくらせるものがいます。どのようにして植物から虫こぶができるのか見てみましょう。
メインホール正面で目を引くタイトル。右側に特集テーマ毎にバナーと展示台が並ぶ。
植物のもともともっていた器官をうまく組み合わせてつくる虫こぶ形成のしくみを解説。
5種類の葉につくられたハエやハチの虫こぶ標本。色も形もさまざまだ。
TOPICS
02 植物の香りは誰を誘う?
花の匂いは花粉を運ぶ昆虫を誘いますが、葉が幼虫にかじられた時に出す匂いは、幼虫の天敵を呼び寄せます。昆虫と植物を密接につなぐ、匂いのはたらきを見てみましょう。
植物が出す匂いに注目して、昆虫と植物のかけひきを特集するコーナー。
キャベツは食べられた幼虫の種類に応じて傷口から出す匂いを変化させ、幼虫の天敵となる寄生バチを引き寄せる。
「系統進化研究室」が植物の匂いを調べる際に用いる実験器具や手法を展示。
TOPICS
03 産みつけられたら、さあ大変!植物の作戦
植物は天敵が来てもその場から逃げることができません。そこで動かずに身を守る術として、植物は昆虫が産みつけた卵を感知し、孵化させないしくみをもつことがわかってきました。
バナーのおもて面。うら面では植物がどのように産みつけられた卵を感知し、卵の孵化や幼虫の摂食を防ぐのか解説。
04 かくれる見せる 幼虫の色とかたち
飛ばず、動きも遅く、植物の上でもっぱら食事中の幼虫は、鳥などの捕食者に常に狙われています。そんな危険から身を守る、アゲハチョウの姿に詰まった知恵を見てみましょう。
TOPICS
バナーのおもて面。うら面ではアゲハチョウの幼虫の「擬態・隠蔽・警告」を紹介。
05 食草園 自然界に開く窓
2021年春から夏にかけて食草園とその周辺地域で撮影した昆虫と植物の映像スケッチです。小さな生きものの営みを季節の移り変わりとともにご覧ください。
ようこそ!Ω食草園へ(TRAILER)
メインホール奥を食草園コーナーに。高槻周辺で撮影した写真や映像で昆虫と植物の営みを伝える。
窓辺にチョウの食草と吸蜜植物を展示。
06 風土に染まる蟲と言葉
『完訳版ファーブル昆虫記』の翻訳者であり、無類の“虫好き”を自認する仏文学者・奥本大三郎先生と永田和宏館長の語り合いです。多様な昆虫の生態も、人間の文化も、自然・風土に培われたものなのです。
対談映像が視聴できるコーナーを設置。
07 とびだすそっくり生きもの
生きものが他の生きものや環境などに体を似せることを擬態といいます。人気の紙工作から昆虫の擬態シリーズを紹介します。隠れたりだましたり巧妙にいきる術が見事です。
3つの紙工作を組み立てて展示。それぞれの擬態のしくみや特徴も解説。
ランなどの花に擬態するハナカマキリ。
雌のハチに擬態するビー・オーキッド。
企画展示室 昼と夜を分けたチョウとガの進化
展示室を中央で2つのエリアに区切り、昼と夜の世界を演出しました。昼のエリアではナミアゲハが見ている色を調べた研究を紹介。成虫は、植物の色や味、匂いをどのように感じ、吸蜜や産卵行動につなげているのでしょう。夜のエリアではガを中心とする鱗翅目昆虫が、超音波を使う天敵コウモリに対抗して進化させた聴覚に注目。チョウやガが感じている世界に迫ります。
チョウ?ガ?
*はチョウ。残りはガ。「チョウは美しい昼の虫、ガは目立たない夜の虫」と思われがちですが、姿形や生き方は種ごとに個性があり、例外だらけです。昼に活動するか、夜に活動するかの違いが、彼らの見た目や行動に大きく影響するようです。
出典:河原章人「昼と夜を分けた鱗翅目昆虫の進化」(季刊「生命誌」105号)
01 ナミアゲハが見る色の世界
花の蜜を吸い、子の食べる植物の葉を見つけて産卵するチョウは、植物の色や味、匂いをどのように感じ、行動につなげているのでしょうか。チョウが感じている世界に迫ります。
黒板風パネルでナミアゲハが見る色の世界を解説。展示台では、ナミアゲハとヒトが共通でもつ「色の恒常性」などについて体験できる。
色とりどりの花を求め、求愛、産卵するチョウの映像スケッチ。過去に季刊「生命誌」で発行したチョウの紙工作も展示。
02 夜の鱗翅目が聴く音の世界
夜行性の昆虫の天敵はコウモリです。超音波で獲物を探すコウモリに対抗して、夜の鱗翅目は聴覚にまつわる性質を進化させています。
黒板風パネルでガが聴く音の世界を紹介。展示台では、ガと天敵コウモリの攻防を捉えた研究映像の見どころを解説。
超音波を発するガの研究動画が見られる。個性的な形をしたヤママユガ科ヨナグニサン属のガの標本も展示。