RESEARCH
細胞がはたらく 後編
生きものは環境との関わりなくしては生きていけません。私たちのからだには光や音など外部からの刺激を受け取る細胞と、その刺激を脳に伝える細胞があります。脳での複雑な情報処理によって環境を知るのです。
今回は、触覚を伝える小さな細胞のはたらきを捉えた仲谷さんと、睡眠時に脳の活動状態を切り替える細胞を見出した林さんの研究を紹介します。個々の細胞に注目する視点と多数の細胞間の連携の全体像を見る視点は共に重要で、その重なりから細胞のはたらきが読み解かれていくのです。
インターネットで記事を読んでいる、今、この瞬間も私の全身で細胞が様々なはたらきをしています。小さな細胞の視点で日常を見つめ、その巧妙なしくみに驚くと、自分が生きる世界が違って見えてきます。「生きものとしての私」を考える大事な視点の一つです。
「生命誌アーカイブより」
これまでの生命誌で取り上げた約700の記事の中から、刺激を受け取る細胞とその刺激を伝える細胞、そして情報をまとめる脳に着目した10の記事を紹介します。
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1.ホヤから私へ
藤田晢也 9号 (1995年)
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2.顕微鏡下の一期一会
濱清 15号 (1997年)
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3.大腸菌の極で鼻のようにはたらくセンサー
川岸郁朗 54号 (2007年)
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4.生まれてから変化する柔軟な脳
俣賀宣子/ヘンシュ貴雄 55号 (2007年)
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5.環境と会話して変化するやわらかなゲノム
郷康広 60号 (2008年)
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6.常に問いを立て続けてー免疫・嗅覚・そして次は
坂野仁 63号 (2009年)
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7.味覚受容体遺伝子がむすぶ化合物と産卵行動
尾崎克久 69号 (2011年)
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8.小鳥がさえずるとき脳内では何が起こっている?
和多和宏 70号 (2011年)
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9.柔軟に変わる海馬の回路
池谷裕二 73号 (2012年)
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10.まばたきは何のためにするのか?
中野珠実 82号 (2014年)