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RESEARCH

機能の自己形成

自己形成型のニューラルネットの代表例はコホネンのマップ(Kohonen's map)である。これは、生理学的に確認されたと同等の連合記憶(associative memory)の構築を可能とすることで名高く、二次元平面に広がるニューロンシート(neural sheet)の特異的な位置に加わる刺激の量により学習程度(記憶の程度)が変化するという、シンプルな基本構造を持つ。

ある特異的な刺激sはシートの特異的な位置に対応し、その近郊に存在する多くのシナプスを s からの距離に基づいた近郊核(neighborhood kernel)に従って、学習させるという概念を基礎としている(図10)。
 
近傍核を二次元のガウス関数とすれば、を分散(variance)として

で表すことができる。ここから、一定の忘却 が起ることを前提に、 の刺激に対してそれぞれのシナプスの学習法則は


で与えられることになる。

(図10)コホネンの自己形成型マップ

これまでの「生命誌」の論文と比べて、原文を生かし、硬めのものになっている。この話はちょっとかみしめて頂くのが良いかなと思ったからだ。本文の理解を助けるための解説も、数式の苦手な人には手強いだろう。ただ、脳に特有の形や働きがどのように形成されていくのかという基本に、比較的単純な法則があるという見方はとても魅力的だ。中田さんから見れば、脳について知りたいのなら、ここにあげた数式がわかるようにならなければダメということだろう。今のところ私も数式の苦手な部類に入っているが、言語と音楽に関する実験から出された「形態と機能を自己形成した脳が産み出す能力」と「脳の使われ方」とを区別するという議論には関心があるので、それを理解するためにも少し努力してみたいと思っている(中村桂子)。

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