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BRHサロン

シロウトさいえんすのススメ

嘉田由紀子
 

琵琶湖周辺で住民参加によるホタル調査(通称ホタルダス)を始めて7年目になる。先ほども10月になるというのに湖東に住む調査仲間から連絡が入り、近くの田圃(たんぼ)でホタルが発見されたということ。届けられたホタルは生きていて、メスのヘイケボタルだった。ホタルは夏の生き物とだけは言いきれないようだ。

平成元年以来、のべ3500人ほどの人たちが身の回りのホタル観察を行ない、さまざまな新しい事実を発見した。そもそも深山幽谷に棲むと信じられていたゲンジボタルが、田圃の脇の水路や集落の中の排水路にたくさん出現していること。ヘイケボタル自身は田圃の中で群生していること。ホタルはきれいな水に棲むというが、むしろ少し汚れた、栄養分のある水域を好むこと、などである。

ホタルがここ20〜30年の間に農薬などの影響で減ったのは確かだろうが、それだけではなく、農業用水の近代化や水道の普及なども影響しているようだ。用水の”近代化”で、春から秋の稲作時しか川や水路に水が流れない。秋から冬にかけて水枯れしてしまうと、幼虫もそのエサとなる貝類なども生きていけない。

ホタルは、古代より水田をつくるために地域に縦横に水路を引き、集落の中の水路には生活用に1年中水を流していたかつての水田農村の水環境にうまく適応していた生き物のようだ。それだけに私たち日本人に身近で馴染みの深い生き物となったようだ。

今年の秋開館予定の琵琶湖博物館では、タンポポ、カタツムリ、ホタルなどの生き物調査、水辺の遊び、生活用排水の歴史など、地域の人たち自身が調査者になる、いわばシロウトさいえんす調査に力を入れている。新しい事実の発見とあわせて、調査自体が一種の地域文化運動の意味ももち始めている。“行動する博物館”の一つの原点になってくれれば、という夢を託して……。

滋賀県下のホタルマップ

(かだ・ゆきこ/琵琶湖博物館開設準備室)

※所属などはすべて季刊「生命誌」掲載当時の情報です。

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