今号テーマ
知に遊ぶ楽しさを
「遊ぶ」というテーマでの2回目。遊ぶことこそ知の基本ではないかと思えてきました。永田和宏先生との対談では、考えることとその時に言葉が与えてくれる広がりとを楽しみました。まさに、遊びの時でした。リサーチの一つは、今話題の幹細胞を多細胞化の始まりに位置するカイメンで解析した研究です。複雑化への道を探るきかっけになりそうです。もう一つは、鳥がさえずる時の発声回路と学習回路のでき方を調べ人間の言語学習の過程を知ることにつなげようという研究です。鳥と人間の脳の意外な類似に驚きました。サイエンティスト・ライブラリーの長谷川先生は、進化を現在進行形で捉えようと理論からフィールドまでを横断しています。たくさんの動物たちの写真撮影には、遊び心が感じられます。生命誌の広がりでは、東北の災害を思いながら宮沢賢治を語りました。この災害は生命誌のテーマとして考え続けるつもりです。(中村桂子)
TALK
短歌と科学、定型の中に生まれる遊び
総合生命科学部教授・学部長
生命誌の広がり
CARD
遊ぶ
愛づる、語る、観る、関わる、生る、続く、めぐる、編む・・・こうして並べると生きもののさまざまな面が見えてきます。東日本大震災とそれによって起きた原子力発電所の事故があった今年は、「生きる」についてこれまで以上に真剣に考えなければならない年になると覚悟をしながら、「遊ぶ」としました。生きものは精密でありながら遊びがあります。「いい加減さ」「ゆらぎ」と言ってもよいかもしれません。しかも私たちは、「遊びをせんとや生まれけむ」なのです。真剣に考えるということは、もっと「遊び」を大切にしようということかもしれないと思っています。合理の権化である機械にも遊びが不可欠です。いつも言葉を決めたら辞書を見ます。「遊ぶ」もたくさんの意味がありました。