サマースクール 2010年度の報告

表現を通して生きものを考える(SICP)セクター
「展示を企画してみよう ~テーマは「生きもの上陸大作戦」~」

SICPスタッフが展示をつくる場合、まず自分で企画を考え、他のスタッフに意見をもらい、「これならいける!」と確信したら、次はSICPディレクターの館長に意見をもらいます。それをくり返して、少しずつ展示の物語を固め(それだけで数ヶ月はかかる)、ようやく展示業者さんに見せられる企画案ができます。それをサマースクールの二日で取り組もうなんて無謀かしらと不安を持ちつつ、当日を迎えました。

今回は参加人数が4人、くじ引きで二人ずつのチームを組んでもらいました。初対面の相手と協力して一つの物をつくるというのは、難しい部分があります。お互いに考えていること、個性も違います。自分の意見をしっかり持ちつつ、相手の意見を受け入れることが、良いものを作っていく上で必要なことですが、お互い初対面ということもあってか、スクール生にとっては難しいようでした。二人で意見が分かれる場合もあり、途中、ハラハラもしましたが、館内ガイドの学生さんたちの粘り強いアドバイスのかいもあって、二日目にはお互いの考えを重ね合わせることができ、研究発表会では立派にプレゼンが出来たと思います。

展示も季刊誌も、一人が全てを考えて作るものではありません。私たちの普段の仕事もサマースクールと同じで、自分で考えた企画案をスタッフや館長に見せて、意見をもらい、少しずつブラッシュアップしていきます。ダメ出しされるともちろん落ち込みますが、大抵自分の考えが足りてないわけで、「あの時、意見をもらえなかったらこれは出来なかっただろうなあ」と完成物を見てしみじみ思い、意見してくれた人に感謝します。

サマースクールで完成した企画案は、色々な人たちのアドバイスが詰まっています。人との関わりから良いものが出来るということを、参加者の皆さんにも実感して頂けたかなと思います。詳しくは感想文をご覧下さい。

参加者の感想

良い物づくりは良い関係から

参加者:A.K.

想像以上に充実した二日間で、このような体験の場を提供して下さったみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。この二日間、調べて、考えて、話して、感じて、本当にたくさんの感覚を使ってサイエンスに取り組んだ気がします。普段忘れいていた感覚を思い出し、とても興奮する時間でした。出来上がったものは未完成で発表も不十分で反省すべき点はたくさんあるのですが、全力で新しいことに取り組んだ結果得られた充実感や満足感の方がはるかに大きいです。適切なアドバイスを下さったスタッフの皆さんのチームワークの良さも垣間見ることができ、やはり良い関係から良い環境が生まれ、良い物づくりができるのだなぁと改めて感じました。限られた時間の中で、段取りが悪くさぞかしはらはらさせただろうと今思い出されますが、最後まで暖かく見守ってくださったことに感謝します。色々な意味で、大変貴重な人生経験になりました。本当にありがとうございました。

研究が持っている世界観を伝えること

参加者:H.Y.

私はサイエンスコミュニケーションに興味を持ちいくつか活動をしてきました。サイエンスコミュニケーションは面白いし意義がある! と思っている反面、活動の多くは単に科学的なお話を伝えて終わりとなりがちで、寂しさと物足りなさを感じていました。何の為にサイエンスコミュニケーションをするのか、これが私の疑問でした。サマースクールに参加した目的も「BRHではどのような思いで表現をする活動をしているのか」を知ることでした。

この目的から参加したとはいえ、当日は本当に忙しくそのようなことを考える暇はなかなかありませんでした。「どうストーリーにするのか・・・、この話で本当に面白いところはどこか・・・、おもしろさを効果的に伝えるプレゼン方法は・・・」、こんな事で頭がいっぱいでした。正直に言えば、サマースクールの二日間は展示を企画することの難しさと楽しさを実感することで精一杯でした。この難しさと楽しさはサマースクールに参加する前にはなかなか想像できないものでした。

「BRHではどのような思いで表現をする活動をしているのか」を考えだしたのはサマースクールが終わってからでした。振り返って今思うことは「表現セクターの方々がやろうとしていることは、その研究が持っているコアな世界観を伝えることなのかな・・・」ということです。単に生物学のおもしろい知識を伝えるのではなく、ゲノムの視点や生態学の視点といった研究の背骨となっているモノの見方を伝える、これがBRHでの表現することなのかなと。展示のストーリーを作る過程で表現セクターの方々から様々な助言を頂きました。この助言を通して感じたことが上記のようなことでした。

以上のように私にはサマースクールへ参加したことの収穫は二つありました。一つは、展示を企画することの難しさと楽しさを体験できたこと。もう一つは、BRHにおけるサイエンスコミュニケーションのあり方を少しですが身をもって体験できたこと。2日間という短い期間でしたが本当に得がたい経験をさせていただきました。このような場を提供して下さったBRH、そして辛抱強くずぶの素人を指導して下さった表現セクターのみなさま、夏の一時に素晴らしい機会をありがとうございました!

たくさんの知見から大きなものがたりを読みとっていくこと

参加者:S.M.

村田先生、板橋先生始め表現セクターの皆様、宮田先生、吉川先生、その他の研究室の先生方、スタッフの皆様、大変お世話になりました。中村館長、このような機会をお与え下さいました事、心からありがたく思っています。

先生のお書きになったものを少しですが拝見して、どんな方なんだろうと思い、お会いしたくて伺ったような次第です。予想に違わず、芯のすっきり通った熱い方でした。さて、生物学もゲノムもほとんど素人同然(人間の事なら少し解りますが)で参加させていただいた訳ですが、皆さん、本当に辛抱強くご指導下さいました。最後の総説で吉川先生のお話を賜りましたが、「観て、考えて、表現する」と「対象の表情を読む」でしたか、研究のスタイルのようなものを教えていただいたかと思われるのですが、これはとても難しい事です。だって、「観る」力、「考える」力、「読む」力、そして「表現する」力が必要だという事ですから。  さて、表現セクターのサマースクールですが、スタッフの皆さんが正しい(語弊のある言葉で済みません)方向へ誘導しようとして、当初からたくさんのヒントと資料を示して下さっているのをヒシヒシと感じながらも、なかなか正しい道に辿り着かない自分を、どうしようもできなかったのが1日目でした。そして2日目。仮に合格ラインを山の頂上だと仮定すると、やっと登山口らしきところが見えて来た地点までは到達できたのかもしれませんが、何せ時間がないので上手にケーブルカーに乗せられて、5合目あたりの完成度で許して頂いたような気がしています。いやはや、出来の悪い生徒で済みません。勉強不足、知識不足は当たり前なのですが、力不足を感じています。それにしても1日目の先生方の辛抱強さには敬服致します。

自分の知らない世界に触れると、ついつい個々の知見に目を奪われてこだわってしまいがちですが(だってインパクトがあります)、たくさんの知見から透けて見える、もっと大きな意味(ものがたり?)を考え、読み取っていかなければならないと、最初から教えて頂いているのに、なかなかそういう整理ができないもどかしさは、本当に勉強になりました。でも表現セクターでは、本当はここからが大切で問題だったのですよね。今回はなかなかそこまで行かなかったのですが、村田先生の言われた、「一般の方のみならず、専門家の方からも評価して頂けるような表現」というものを、今後は私も目指す事ができたらと、今はそう考えています。

ところで、今回「柔らかなゲノム」や「偽遺伝子」という知見を得て、私どもの仕事に関して納得というか、思い至った事がありました。病気の人がお薬をちゃんと継続して飲んでくれる事を、「コンプライアンスが良い」という言い方をし、それは薬剤に限らず、処方された「運動」や「食餌」に関してもそのような考え方をします。お薬くらいならまだなんとか継続できるのですが、「運動」や「食餌」療法となると、なかなか継続できない方が多いのです。どちらも継続しないと効果がないため、「継続」は医師、栄養士、運動指導に携わる者全ての永遠のテーマになっています。「根っこ(ゲノム?)がそうなのか!」と思い至りました。「新しい事に対応しようとする柔軟性と能力はあるけれど、しなくて済む事はしたくない。余分なエネルギーはなるべく使いたくない省エネ気質」が生き物の繁栄の一翼を担っているのだったら、これは難しいな、と。それがベースになっていて、それが正しいのだと認めちゃった方がみんな楽になれるのかな、と(解釈が間違っていたら済みません)。そうは言っても、指導を受け入れた方が個々人の健康と病気のコントロールのためには良い、と考えられる人は大勢いるので、もう少し戦略を考えていきたいと思います。

最後になりますが、考え抜かれ、美しく整理された館内で、日頃使わないような頭の使い方をした2日間は、私のような専門外の者にとっては、未消化だったり、不消化だったりする部分を残しはしますが、大変有意義だったと、日が経つにつれてより強く思います。この機会と皆様に巡り会えて本当によかったです。ありがとうございました。

熱い思いがありました

参加者:R.T.

学館で仕事をしている私にとっても、生命誌館のサマースクールについては未知なことばかりからのスタートでした。分野も興味もばらばらの人たちが、どうやって展示をつくるという同じ目標に向かっていくのか。その工程をスタッフの人はどんな風にサポートし、まとめあげていくのだろう? 今振り返ると、自分自身参加しながら、一歩引いた目でスタッフの皆さんの言葉やアクションを見ていたようにも思います。

スタッフの皆さんには、「生き物上陸大作戦」に対する熱い思いがありました。それが一番感じたところです。本にも展示にも直接は現れていないスタッフの思いがあり、それについては解説をお聞きして、その深さを理解できました。

制作の工程では、紙芝居や粘土工作などを使ったアイディアがとてもキュートで、それは私の職場での仕事にも使ってみたいところがありました。

れからも生命誌館らしい展示製作を続け、来館者を楽しませてほしいと思います。大変お世話になりましたがありがとうございました。

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