BRH公開セミナー2007年度の報告

タイトル
ワークショップ「チョウのハネから見る、生きものの機能・発生・進化」
日時
2007年11月30日
場所
JT生命誌研究館
プログラム
1.「はじめに:チョウのハネが提起する様々な課題」
講演者:吉田昭広
2.「光と構造の織りなす色:チョウやガの構造発色」
講演者:木下修一(大阪大学大学院生命機能研究科)
3.「チョウ類の特異な胸部形態はどのようにして形成されたか」
講演者:江本 純(南山大学生物学研究室)
4.「鱗翅目昆虫に特有な翅形成の分子機構」
講演者:藤原晴彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
5.「アゲハ幼虫の擬態文様に関わる遺伝子の解析とホルモンによる発現制御」
講演者:二橋 亮(農業生物資源研究所)
6.特別講演「日本産クワコの由来:クワコ特有の染色体の探索とカイコとの比較」
講演者:前川秀彰(琉球大学遺伝子実験センター)
タイトル
「ショウジョウバエにおける寄主選択行動進化の遺伝的基盤」
日時
2007年10月23日
場所
JT生命誌研究館
講演者
松尾隆嗣(首都大学東京大学院理工学研究科)
プログラム
1.「セイシェルショウジョウバエの特異な食性に関わる遺伝子の同定」
内容:

セイシェルショウジョウバエは遺伝学のモデル生物キイロショウジョウバエから見て最も近縁な種の一つであり、形態的にはとてもよく似ているにもかかわらず、その食性は一風変わっている。 すなわち、悪臭を放つことで知られる「タヒチアン・ノニ」の果実を繁殖場所としているのである。この悪臭の主成分はヘキサン酸とオクタン酸であるが、キイロショウジョウバエやその他のショウジョウバエはこの2つの脂肪酸を忌避するのに対し、セイシェルショウジョウバエだけは誘引される。種間雑種を用いた遺伝学的マッピング、およびキイロショウジョウバエにおける遺伝子ターゲティング法により、ヘキサン酸とオクタン酸に対する反応の種間差異をもたらす原因遺伝子座として Odorant-binding protein 57d (Obp57d)とObp57eを同定した。最近の比較ゲノム解析による報告とあわせて、セイシェルショウジョウバエの食性進化の道筋を考える。

Intermission:「化学感覚受容に関わる遺伝子ファミリーのサイズと生活誌」

2.「Obp57d/e 遺伝子クラスターの進化」
内容:

Obp57dとObp57eはゲノム上でクラスターを形成しており、化学感覚毛に付随する同一の細胞で共発現している。キイロショウジョウバエに近縁な26種からこの領域のゲノム配列を決定し比較した結果、この2つの遺伝子が進化の過程で重複と欠失を繰り返しながらその数をダイナミックに変化させてきた様子が明らかになった。さらに、アミノ酸配列比較からObp57dとObp57eは機能的に分化している可能性が示唆された。一方、それぞれの遺伝子の発現様式についても種間で相違があった。遺伝子の数、機能、発現様式の進化と昆虫の食性の進化との関係について考える。

タイトル
「トンボのDNAを調べて何が分かるか? ――種間雑種の判定と遺伝子浸透、形質置換の考察――」
日時
2007年8月20日
場所
JT生命誌研究館
講演者
二橋 亮(農業生物資源研究所)
内容
トンボ目昆虫は、近縁種間でも形態や行動に多様性が見られるグループである。これは、種の認識が基本的に視覚に頼っているためと考えられるが、一方で、異種間での連結や交尾の観察例も多く存在し、種間雑種と思われる個体もときどき採集される。しかし、形態的特徴のみでは、本当に雑種であるのか、何と何の雑種であるのかを判定することが極めて困難である。演者は、核およびミトコンドリアDNAの解析から、複数の例でトンボ類の種間雑種の判定を試みた。異種間で産卵された卵から得られた雑種の解析の結果、核DNAは両親の配列が混ざっており、ミトコンドリアDNAは母親由来であることが確認できた。この結果をふまえて、野外で採集された雑種個体の解析したところ、雑種であるかどうかに加えて、多くの場合は親の組み合わせ(どちらの種が母親であるか)も特定できた。また、雑種の生じやすさ(たとえばマユタテアカネ♂が他種♀と雑種を作りやすいなど)も確認できるようになった。しかし、非常に近縁な種間(カワトンボ属やギンヤンマ属など)では、ミトコンドリアDNAが種差を反映しない例(したがってどちらの種が母親だったか特定できない)も見られた。これは雑種を介してミトコンドリアDNAが種を超えて広まった結果と考えられる。雑種ができるほど近縁な種が同所的に生息する場合、雑種形成を回避するメカニズムが発達することが予想されるが、カワトンボ属とアカネ属を例に、近縁種間における翅色と体色の形質置換の例を考察したい。
タイトル
「脊椎動物ゲノムの比較解析とカエルの高効率トランスジェニックシステムを用いた発生制御ネットワークの解析―Functional genomics in Xenopus」
日時
2007年5月25日
場所
JT生命誌研究館
講演者
荻野肇(Department of Biology, University of Virginia)
内容

近年、ヒトからマウス、トリ、カエル、サカナに至るまで、様々な種の全ゲノム配列が急速に決定されつつある。それらの比較解析から、タンパク質のコード領域の3倍以上の非コード領域が脊椎動物を通じて保存されていることが明らかになってきた。モジュール状に分散する保存非コード領域の多くはエンハンサーなどの転写調節配列と考えられ、その迅速かつ網羅的な解析はポストゲノムシークエンシング時代の重要な課題である。

これら機能ゲノム解析をおこなうためには、機動力の高い遺伝子導入システムが必要不可欠である。しかし、従来のマウスやサカナのトランスジェニックシステムでは、その手間とコスト、導入遺伝子のモザイク発現などの問題から、この要求を満たすことは困難である。

我々はこの問題を解決するため、新しい発生遺伝学のモデル動物として注目を浴びている世代時間の短いカエル、ゼノパス・トロピカリスを用いて、簡便かつ高効率なトランスジェニック技術( I-SceI トランスジェネシス法)を開発し、ゲノム上に散在する保存配列のエンハンサー活性を網羅的にスキャンしてそのトランスジェニック系統を樹立するパイプラインを確立した。さらに眼の水晶体の発生制御遺伝子に関して、その保存非コード領域の解析をおこない、領域特異性を決定するホメオボックス型転写因子がNotchシグナルと協調して下流遺伝子を活性化するしくみを明らかにした。また、I-SceIトランスジェネシス法を用いて、カエルを用いたエンハンサートラップ及びジーントラップ実験系を構築することにも成功した。

本セミナーでは、ポストゲノムシークエンシング、ポストノックアウトマウス研究の時代にゲノムの機能解析をおこなう上での、カエルのシステムの卓越した機動力について紹介したい。

タイトル
「The molecular basis of olfactory reception in moths」
日時
2007年4月13日
場所
JT生命誌研究館
講演者
Emmanuelle Jacquin-Joly (Institut National de la Recherche Agronomique, France; INRA: フランス国立農学研究所)
プログラム

Spodoptera属(ヨトウガの仲間)は、ヨーロッパ各地で最も重要な農業害虫の一つとなっている。より効果的で、環境負荷も小さく、永続的に利用可能な防除方法の開発は、フランスの農学研究において重要なテーマとなっている。ヨトウガの仲間は、嗅覚を利用し餌植物に接近して産卵することから、嗅覚の仕組みを解明することができれば、生得的な行動を利用して耐性の発達する可能性のない有力な防除方法の開発に役立つと考えられる。

嗅覚受容に関連する遺伝子を探索するため、ヨトウガ触覚のcDNAライブラリーを作成し、数千クローンの塩基配列を決定し、SpodobaseというESTデータベースを公開している。このライブラリーの解析から、これまでに触覚だけで発現するPhBP、GOBP、ABPX遺伝子を数種類発見している。CSPは6種類発見しているが、そのうちの5種類は全身で発現し、CSP5は触覚、口吻、前脚といった感覚器官でだけ発現していることを確認している。現在、これら運搬タンパクと思われる遺伝子群について、詳細な機能解析に取り組んでいる。

化学受容体の候補遺伝子もいくつか発見しているが、他の受容体候補遺伝子の探索と機能解析の方法について、生命誌研究館・昆虫と植物の共進化ラボと協力し、取り組んでいく予定である。

タイトル
「BRH公開セミナー」
日時
2007年3月7日
場所
JT生命誌研究館
プログラム
1.「細菌染色体の動態~染色体形態の制御機構~」
講演者:
大庭良介(京都大学)
内容:

原核生物・真核生物を問わず、染色体はタンパク質等によって階層的に折り畳まれ、細胞あるいは核内に収められています。本セミナーでは、細菌染色体に焦点を当て、階層性維持へのRNAの貢献、形態変化のためのDNAトポロジー制御の重要性、について報告したいと思います。


2.「ステロイドホルモンによるショウジョウバエの発生タイミングの制御」
講演者:
小野 肇(京都大学)
内容:

昆虫は生育過程において適切な時期に脱皮変態を遂げる必要がある。しかし発生のタイミングを制御する機構は明らかにされていない。発生タイミングの決定は、発生を誘導する情報物質がどのタイミングで生合成されるか、生合成がどのようにして調節されているか、その情報物質がどのように伝えられるかが鍵となる。昆虫の脱皮変態は数種類のホルモンの複合的な作用によって制御されており、そのうちステロイドホルモンであるエクジステロイドは必要とされる時期に神経ペプチドの刺激により生合成されて脱皮変態を引き起こす。これよりエクジステロイドによる発生タイミングの決定機構を明らかにすることを目的として、エクジステロイド生合成機構、神経ペプチドによるエクジステロイド分泌制御機構、エクジステロイドの関与する情報伝達の経路の解明を進めている。現在までに、ショウジョウバエではエクジステロイド生合成酵素の一つが遺伝子重複によって生じたと考えられる2種類の相同遺伝子(spo/spok)によってコードされていることを明らかにした。これらのパラログはそれぞれ異なる発生段階にて特異的に発現しており、そのうち幼虫の時期に発現している遺伝子(spok)の発現のタイミングが幼虫の脱皮に必須の転写因子(mld)によって制御されていることを明らかにした。

さまざまな交流

  • 2016年
  • 2015年
  • 2013年2014年
  • 2012年
  • 2010年
  • 2010年
  • 2008年
  • 2007年
  • 2006年
  • 2005年
  • 2004年
  • 2003年
  • 2002年
  • 2001年

ページの先頭へ