ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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オオヒメグモ売り出し中

2018年8月1日

小田 広樹

前回3月のラボ日記で、「クモの縞パターンの論文が出ます」と報告しましたが、あの後雑誌の表紙のデザインを提案して採用されました(https://www.journals.elsevier.com/developmental-biology/cover-of-the-week/volume-437-issue-2-15-may-2018) 。

さらに、今回の論文の内容を紹介する記事を一般向けに英語で書きました (https://sciencetrends.com/how-to-make-stripes-in-a-field-of-cells-a-spider-species-for-research/)。世界のより広くにオオヒメグモの魅力を伝えて、有用性の高いモデル生物として研究や教育に使われるような状況を作りたいと思っています。

縞パターンを生むダイナミクスに加えて、人為的撹乱に対する調整能力の高さもオオヒメグモの魅力です。この魅力を伝えるべく、現在新たな論文の作成に取りかかっています。クモの実験発生生物学者の先駆者スウェーデンのオーケ・ホルムは、1952年に発表した論文 (Holm 1952) の中で、主に2つの方法で重複胚を誘導できることを示しています。ひとつは、彼がオルガナイザーと特定したクムルスと呼ばれる領域の移植によって、もうひとつは、胚を二つに切ってそのふたつの半胚を回転してずらす操作によって。後者の実験は、2つに分断化された胚断片それぞれに完全な体を作ろうとする能力があることを示すものです。昆虫胚にも種によっては同様の性質があることが古くから知られています (Krause 1934)。祖先の節足動物の胚が持っていた性質かもしれません。私たちは、ショウジョウバエをモデルとする研究では見過ごされてきた、元々の節足動物の胚細胞が持っていた不思議な能力をオオヒメグモで解析できるかもしれないと期待していて、今後も、そういうオオヒメグモの魅力を論文や紹介記事などを通して世界に発信して行きたいと思います。

1. Holm (1952). Experimentelle Untersuchungen über die Entwicklung und EntwicklungsCphysiologie des Spinnenembryos. Zool. BiDr Uppsala 29, 293-424.

2. Krause, G. (1934). ANALYSE ERSTER DIFFERENZIERUNGSPROZESSE IM KEIM DER GEWÄCHSHAUSHEUSCHRECKE DURCH KÜNSTLICH ERZEUGTE ZWILLINGS-, DOPPEL- UND MEHRFACHBILDUNGEN. Wilhelm Roux Arch. Entw. Mech. Org. 132, 115-205.

[ ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田広樹 ]

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