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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【系統発生でいいのかな?】

小田広樹

 昨年末に、私の以前のボスの月田承一郎教授 (京都大学医学研究科) が52歳で亡くなった。月田さんは、細胞と細胞をつなぐ構造 (ジャンクション) を構成している分子を次々に明らかにし、この分野をリードしてきた。月田さんの偉大さは、複数の有名雑誌で追悼文が掲載されたことからもわかる。  私は月田さんが代表をする研究プロジェクトでグループリーダーをさせてもらっていたのですが、ショウジョウバエをやると言って始めたはずなのにエビやフナムシ、クモを使って実験をしていた私たちに度々投げかけてきた質問は、「これから本当に系統発生でいいのかな?」でした。この質問には、証明できないことをやってもしょうがないのではないかという意味を含んでいたと思います。  現在、生命誌研究館で研究をしていても、月田さんの言葉はずっと気になっています。系統発生の問題にどうやって説得力のある答えを出せるのか、試行錯誤が続く毎日です。


[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田広樹]

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