ちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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生物学は学問じゃないの?

2018年3月1日

たまたまある会議で「大学生の学問へのイメージ」というグラフを見ました。科学技術振興機構(JST)が、人々が科学をどのように受け止めているかを調査し、市民の科学への理解を深める方法を探ろうとして行なった調査の一つです。グラフをごらんになって、難しさが一番高いのは数学と医学だなとかあれこれ楽しんでいただけると思います。実はこれを見せて下さったのは天文学の専門家なので、「天文学って美しくって楽しい学問と思われているんです」とちょっと自慢げでした。確かに同じパターンは芸術学(言葉としてあまりなじみませんが)であり、他の理系の学問は難しさというところが高くなっています。

ところで、このグラフを見て私がまず気になったのは、実はそのことではありません。ここに「生物学」がないのです(高校の理科の科目で言うなら地学もありませんね)。おーい、生物学よ。どこへ行ってしまったのだと探しに行きたい気持です。恐らくここでは生命科学になり、それが医学の中に組み込まれているのでしょう。JSTの役割は科学技術振興ですから、役に立たないことには眼を向けませんとおっしゃるのかもしれません。でもグラフの題には「学問」とあり、下には「基礎科学」と書いてあるのですから、やはり?は消えません。根がいい加減なので、普段は細かいことにこだわるのは止めようよという方です。でも「人間は生きものであり、自然の一部である」ということを基本にした知を創ろうと願い、社会づくりの始まりもここにあると考えている「生命誌」としては、ここはちょっとこだわりたいのです。考える対象から「生きもの」を消さないことは大事だとお思いになりませんか。

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