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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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核兵器をもたない人類

2017年5月15日

核兵器がもし使われれば対応の術はないことはわかっている中で核保有大国が存在し、それが戦争抑止の役割をするとされてきました。政治にも外交にもしろうとの私はその論理を積極的に取り入れる気にはなりませんが、これまではそれが主流の考え方でした。けれども、政治・外交を荷う国のトップたちがどう見ても理性的とは思えない行動を見せる時代になったこともあってでしょうか。やっと「核兵器禁止条約の国連会議」が開かれました。NGO、研究者、議員などが会議運営に大切な役割をしたとのこと、やっとというのが実感です。もっとも参加した115ヶ国の中には、米国やロシアなどを含む核保有国はいません。とても残念なのは、日本が参加しなかったことです。日本代表が座るべき席に「Wish you were here」と書かれた折り鶴を置かれたことを、眞剣に受け止めなければいけません。もっとも、軍縮大使は会場にいらしたようなのですが、会議に参加したのではなく出席しただけなのだそうです。こういうのを外交・政治と言うのでしょうか。私にはわからない世界です。イデオロギーとかかけ引きとかすべてを越えて「核兵器を持たない人類」になる時が来ているのではないでしょうか。ホモ・サピエンスという名前をよく噛みしめて、「ほんとうのかしこさ」を持つ時なのではないかと思います。

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