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中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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【高校生の挑戦は続きます】

2008.4.15 

中村桂子館長
  農地としての整備には、まず農道の造成です。前にも述べましたが、農業土木部ですから設計をきちんとします。ここでの課題は、傾斜角減少。図面を見て下さい。



 この結果(1)軽トラックで走れるようになり(2)日当たりがよくなって野草が回復しました。ほとんど消えていたタチツボスミレが796株見られるようになったとのことです。796株のスミレ、想像しただけで可愛いですね。
 次は農業水路、これもきちんと図面つきです。



 このようにした結果、早瀬と平瀬ができ、淀みも生まれました。変化に富んだ流れができたので、多様な生物が棲むようになり、オニヤンマのヤゴやトウキョウサンショウウオも見られたそうです。スゴーイ!ですね。
 先回紹介した大変な開墾で作った水田にはコシヒカリと赤米を植え、ここにはアズマヒキガエル(家の池にもいるあまり可愛いとはいえないカエル)、シュレーゲルアオガエルなどカエル類が生息するようになったとのことです。
 更にもう一つ、ため池をつくりました。これも図入りです。



 水田、ため池、農水路、農道。見事な復活です。そして次の彼らの目標は・・・トキなのです。実は1953年まで千葉県にはトキが生息していたという記録があるのだそうです。東京に暮らしていながら知りませんでした。中国のトキ研究者を招いて話を聞いたところ、“中国のトキ生息場所とよく似ている”と言われたとのこと。谷津田は北緯35°。中国の生息地、険西省洋県もまったく同じ緯度、佐渡はその少し北です。

 トキを目指して、まずは多様な生きものたちが暮らせる場所づくりから始めようと今取り組んでいるのは、ダブル畦といって、幅の広い畦の真ん中を少し凹ませて草地ビオトープにする工夫です。その結果、ドジョウ、バッタ、カマキリ、クモ、カエルが標準畦の場合の2倍ほどになりました。とくにカエルは6倍です。もちろんよいお米をできるだけたくさん採る工夫も。今も活動は続いており、地元の農家とも話し合い、理解が深まっているとのこと。若い人の力はすばらしいですね。計画的に、しかも着々と事を仕上げていく様子に頭が下がります。トキにもこの気持が通じますように。


 【中村桂子】


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