中村桂子のちょっと一言
館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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2003.6.1 

【ミツバチとオタマジャクシ】
 
中村桂子館長
 日常はあまりのんびりでもないのですが、ここはもう一度のんびり型でいきます。というのも5月になっていただく電話や手紙に、今年はミツバチは分蜂しましたかという質問が多いのです。そこで、この場でご報告をしようと思う次第です。
 5月の連休に入った日、蜂の巣のまわりがとても賑やかになりました。いつもは巣の周囲に2.3匹ウロウロしている程度なのに、20匹くらい、時には重なり合って動きまわっています。なんだかあやしいと思っていたら、その夜、新子谷先生から電話がかかってきました。ソロソロではありませんかとおっしゃるのです。奈良にいらっしゃるのにどうして東京のことがわかるのか。あまりのぴったりさ加減に驚きましたが、様子をお話すると箱を送りましょうとのこと。でも、分蜂現場に出会えるかどうかわからないので・・・ちょっと引いていたのですが、次の週末、大阪から東京へ帰ってみたら箱が届いていました。ありがたいけれど、そんなにうまくはいかないだろう。でも庭に置くだけ置いておこうと、土曜日の朝箱を持って外へ出てみたら、なんと、桜の木に蜂のボールができているではありませんか。いつ分かれたのかは知らないけれど、奈良から箱が来るのを待っていたとしか思えません。どこかで新子谷先生とハチの通信があったのでしょう。間に入っている者としては両者の言うことを聞いて、箱に入れるのが役目だと思った次第。自然界では、私などにはとらえきれない情報がとび交っているのだと思いました。
 もう一つ。池のオタマジャクシが全員一カ所に集まって、どう見ても陸へ上がろうとしている。まだ脚が生えていないのにです。暫く見ていましたがわけがわからないので家に入って・・・1時間ほどして出てみたら、池の縁の葉っぱや小石の上にオタマジャクシが何匹もはりついていて、残りは知らん顔して泳ぎまわっていました。葉っぱの上のまだ湿っている一匹を池に戻したら、泳ぎはじめた・・・でもあのままだったら干からびるに違いありません。事実、まだたくさんのオタマジャクシが陸にいました。オタマジャクシの自殺。実はこのオタマジャクシの兄弟を、タマゴの時に研究館まで運びました。研究用に使えるかと。調べてもらったらアズマヒキガエルとわかったので、外へは出ないように・・・アズマである以上、西で外に出してはいけないと思って、室内の水槽に入れました。ところで、東京の池でオタマジャクシが陸に上がった時、高槻の水槽でも皆んなが一カ所に集まって外へ出たそうにしていたのだそうです。残念ながら水槽では出られませんでしたけれど。何が何をさせたのか。これもわからないこと。ハチとかオタマジャクシとか子どもの頃からつき合ってきたつもりでしたが、今頃になって、あれこれ思いがけないことに出会います。これが生きものの世界の面白さでしょうか。

1. ミツバチの集まる桜の木と(左手前)と、オタマジャクシの池(中央)。 2. 桜の木の下に置いた箱に分蜂します。
3. ハチの入った箱は、日陰にそっと
移動しました。
4. 池のオタマジャクシが全員一カ所に
集まっています。
5. ついに陸にあがってしまった
オタマジャクシ。
6. オタマジャクシが小石や葉っぱの上に
はりついています。

※昨年の分蜂のようすは
【ちょっとした冒険】2002年5月15日でご覧下さい。


【中村桂子】


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