中村桂子のちょっと一言
館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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2003.1.15 

【ペシミスティック・オプティミズム】
 
中村桂子館長
 お正月休みはいかがでしたか。今年は元日が水曜日だったので5日までお休み。9連休で、海外旅行、しかもヨーロッパなど遠距離の旅行を楽しんだ方も多かったようですね。私は家で年末に若い人たちから渡された宿題を眼の前に、ニコニコ顔で帰国する人々をテレビニュースで見ながら一緒にちょっとだけ楽しい気分になっていました。次に元日が水曜日になるのは11年先なんだそうですね。閏年もあるので、各曜日が均等に配分されるものではないようで、9連休は遠い先。そんなことより今年ですね。今年も、私が「ペシミスティック・オプティミズム」と名付けている線でいくしかないと思っています。現実はかなり悲観的なことが多く、それを見過ごしてノホホンとしていてはいけない。けれども行動としては、人間を信じて明るい先行きを求めていくということです。
 「生命」について考えている者として今年は早々に面倒な課題をつきつけられています。一つは“生物兵器”(テロに使われることも含めて)、もう一つは“人間のクローン”です。どちらも、私がこの分野に入った頃から話題になっていましたが、なんとなく「いくらなんでもそれはなかろう」と意識の奥の方にしまいこんできました。
 物理学での素晴らしい成果を核兵器につなげてしまった時、アインシュタインを初めとして湯川秀樹先生を含む多くの物理学者は悩み、考え、行動をしました。物理学と生物学の違いもありますし、多くの生物研究者は恐らく私と同じように、「いくらなんでもそれはなかろう」と思ってきたと思いますので、あれこれ複雑な思いで事態を受け止めているところだろうと思います。
 お正月早々悩ましいところへ入りこんでしまい、すぐに答えの出せることでもありませんが、「生命」「生きもの」を基本にして、どう考えていくか。「生命誌」としては大事な事です。


【中村桂子】


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