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みんなの広場

研究

2024.09.26

アゲハは幼虫の食草をどのように見つけるのか?

ながちゅー

貴館の「蝶が食草を見分ける仕組み」論文を拝見しました。
https://www.brh.co.jp/research/lab01/
キアゲハとナミアゲハ、あるいは食性の狭いスズメガのような芋虫の親たちは、どのように食草を発見し住み分けているのか、常々疑問に思っており、こうした本能の働きに驚くとともに深く感動いたしました。
本能のままに食草を見つけ、ひたすらに好物の草を喰む芋虫の姿は、さながら産まれたての赤ん坊のようで見ていて愛おしいものです。

さて、論文を読んでも腑に落ちなかったことがあります。
我が家の庭にはミカン科ではイヌゴシュユの若木のみがあり、まだ花は咲かず実もつけないのですが、ナミアゲハはこれをどうしてか発見して飛来し、多い日には10数粒もの卵を産み付け去っていきます。
イヌゴシュユの木自身が、ナミアゲハにとっての焼き肉や鰻の蒲焼のような美味しい匂いを放っているとしか思えません。

ナミアゲハの親たちは、花の香りも紫外線も放たないこの食草をどのように見つけ、やってくるのでしょうか?
ドラミングによって望ましい化合物を感知するほかに、嗅覚のように遠くにある食草を嗅ぎつける器官が存在すると言うことでしょうか?
よろしくご教示ください。

2024.09.26

1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)

周囲から隠れるように生えている小さな木や、マンションのテラスに置いた鉢植えなど、「なぜこれを見つけて卵を産んだ?」と不思議に思われることも多いかと思います。

結論からお伝えすると、科学的には未解明です。しかしながら、様々な観察例や研究例から、おそらく嗅覚が大切な役割を持っていると考えています。

現在、科学的には、蝶のメス成虫が産卵場所を見つけるときの行動は下記のように考えられています。
1. 視覚情報を利用して植物を探索する
2. 半ば手当たり次第に植物に着地する(文学的には「ひらひらと舞い遊ぶように植物に飛来する」と表現されたりもします)
3. 前脚でドラミング(味見)をする
4. 食草であると確認したら産卵、違うと判断したら飛び去る

実際には、2に関してはやや怪しいです。アゲハチョウのメスが飛んでいる様子を観察していると、食草付近では少しゆっくりとした飛び方になるので、植物の匂いを感じながらある程度目星をつけて着地していると思います。

総研大の木下先生の研究では、アゲハチョウのメス成虫は、触角からつながっている脳の中の嗅覚に関する部分が顕著に発達しており、食草の匂いを経験する前と後では色に対する選好性が変化するそうです。

これらを総合的に考えると、長距離では複眼による視覚を利用して「植物」というものを探索する、中距離では触角による嗅覚を利用して「食草」に目星をつける、短距離では前脚による「味見」をして確認する、という三段階の行動をしているのではないでしょうか。

あくまでも個人的な仮説ですが、ご参考になりましたら幸いです。

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