生命誌について
2023.08.20
フィールドで生命誌を
Shotaro
生業の一つとして森のガイドをしており、陸上植物の進化の歴史や多様性(個性の違い)の重要性などをお話しながら歩くこともしばしばあります。
そのような領域の学びをする中で、最近になってようやく中村桂子先生の「生命誌」や岩槻邦男先生の「生命系」といった考え方に出会え、先月は生命誌館を訪問できました。大変刺激になりました。ありがとうございました。
それぞれの生命は共通性がありながらも多様性(違い)があり、それらが違った役割を持ってつながっているからこそ各生命が生きていけること、人もその大きな生き物の中でしか生きていけないことを私達がしっかり理解することは、人間社会における個性の尊重や、人類が生き延びるためにもSDGsにも先行して重要ではないかと思います。
ゲノムなどについてはあまり詳しくありませんが、これからも生命・生命誌に関する学びを続けてフィールドでの解説や体験に活かし、参加者の方々の共感、できれば選択と行動につながるよう努力していきたいと思っております。
2023.08.25
1. 中村桂子(名誉館長)
Shotaro様
森のガイドをなさっているとのこと、今年は虫や鳥たちがどんな様子ですか。
長い生きものの歴史を考えながらお話をしていらっしゃるのはすばらしいですね。
「生命誌」に気づいて下さってありがとうございます。是非、活かして下さい。
実は東京は雨不足でカラカラになり、私の家の庭でもどう処理しても出てきて
困っていた笹が枯れましたし、やぶ蚊がいないという普段と全く違う様相になり
ました。。助かっているところもあり、自然とのお付き合いは小さな場所でもいろ
いろあると思っています。
森のお話聞かせて下さい。
中村桂子
2023.08.29
2. Shotaro
中村桂子先生
お返事いただきまして誠にありがとうございます。
私のフィールドは、香川の標高1000mの山の上なのですが、かなり秋めいてきました。
鳥たちは繁殖期を過ぎ、かなり静かになりましたが、ソウシチョウだけは元気にさえずっています。特定外来生物ではありますが、彼らも求愛して相手を見つけ、ヒナ達のために餌をとって生命をつないでいるかと思うとなかなか複雑な思いになります。
虫たちは少し前まできエゾゼミがにぎやかでしたが、今はミヤマアカネが飛び交い、オオミズアオやスズメガの仲間などもよく見かけます。足元ではツルリンドウやキンミズヒキなどが咲き始めました。
お庭のササが枯れてしまったとは!私は学生時代に奈良の大台ヶ原という山でニホンジカによる森林衰退とササの繁茂について調べていましたが、ササが枯れるというのは相当な状況のような気がします。先生はたしかお庭のイベントにも関わられていたと思いますが、いつかお庭も訪問させていただきたいと願っています。
最後にご相談で恐縮なのですが、森の中でツアー参加者の方々が「生命誌」についてより想いをはせられるような体験をもっと取り入れていきたいと考えております。先生におかれまして体験そのものはもちろん、自然観察会や参考書籍などでもなにかお心あたりがございましたら、今後の学びのためにご教授いただけないでしょうか?
大変お忙しいことと存じますので、お返事はご無理なくで結構ですが、まずはご相談まで。
森の一番いいところは、森の中では目に映るもののほとんどが生命だということだと思っています。少しでもその良さを活かした活動にしてまいりたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
今回も長々と失礼いたしました。ありがとうございました。
2023.09.06
3. こう
Shotaro 様
学生時代、大台で活動されていたんですね。私も山が好きで、若い頃は大峰を
歩いていましたが、大台・大杉谷にもよく行きました。朽ちて床板の落ちた
吊り橋が何か所もあり、ふらふら揺れながら歩いた楽しい想い出です。
さて、山登りの源点は沢登りですが、人間を含む多様な生きものにとって
沢筋の水辺は最も居心地の良い環境です。
そこで、歩き始める時や途中の休憩時に渓流の水辺で、生きもの上陸大作戦
の絵巻を拡げて全体的なお話をされるのはいかがでしょう。
いざ歩き始めたら、いつもそこにある植生・植物と、その時出会った動物との
共生など個別関係を事前にお調べになってのお話になると思います。
今の山辺での私は、季節の山野草を探し観て食べて喜んでいますが
色々な方々と森を歩いてお話を楽しんでおられる様子、健康的で良いですね。
2023.09.15
4. Shotaro
こうさん
コメントいただき誠にありがとうございます!大変うれしいです。ちょっと仕事でバタバタしていて確認が遅れて申し訳ありませんでした。
大峰も素敵な場所ですよね。調査で山を歩いて弥山、釈迦ヶ岳、前鬼の集落など行ったことを思い出しました。
30年前の当時でもすでにニホンジカの影響が大きく、オオヤマレンゲは防鹿柵の中だけでしたし、林床の草はきれいに食べられていて公園のようで、調査に同行した環境庁(当時)の職員の人と「これが公園だったら、ボランディア(deer)だよね」と冗談交わしたことも懐かしい思い出です。
さて、前置きが長くなってすみません。上陸作戦のことありがとうございます!
たまたまなのですが、香川で森のガイドを始めた当初から陸上植物の進化の歴史をお話しております。当時は生命誌のことを知らず、「自分らしさ(個性、多様性)が大切」という観点から、多様性の重要性、そしてそれぞれの生態に優劣はないことなどをお話してきました。
現在はそこに加えてすべての生命が生命の循環においてなんらかの役割を担っていることなどをお話しています。
一方で、お客様にとって知識に加えて、より実感できること、なにか五感などで生命の一体性?を体験できることがないかなと考えております。
やってみていることとしては、樹木の葉っぱの前で息をして、さきほどまで自分の体の一部だった炭素が樹木の一部になったり、逆に樹木の酸素の一部が自分の体になったことを想像していただくなどなのですが…
でも生命絵巻を使って視覚的に訴えるのは素敵なアイデアです。実際にやってみます。またぜひ機会ありましたら、アイデアいただけたら嬉しいです。改めてお礼申し上げます。ご提案ありがとうございました!
2023.09.20
5. こう
Shotaro 様
コメントありがとうございます。大峰も歩いておられたんですね。
都会から遠く雨量全国一の大台は、魅力的な山と渓谷が拡がっていますね。
私が若い頃一時入っていた沢登りの会は、当時ほとんど知られていなかった
複雑な大台の沢の地図を作成するため精力的に山に入っていました。
それからしばらくして大台ヶ原の西半分がひどく荒れて入山禁止になった
と、よく報道されていましたね。
さて、コメントから植物がご専門の様子ですが、植物をベースにお話しさ
れるのに役立ちそうな一般向けの報道や著作をいくつかあげてみます。
① 昨年末~植物・昆虫・微生物のテーマで3回放送されたNHKスペシャ
ル“超進化論”木と木は会話している。光が届きにくい林床の幼木には
地中に張り巡らされた菌糸によって大きな木から幼木に栄養が送られて
いる・・・はじめ、新しい研究成果に基づいた話が満載でした。
今でもショートならユーチューブで見れますし単行本も出ています。
② 鳥と花や実、鳥と虫との関係では、“元・日本野鳥の会会長 上田恵介
花・鳥・虫のしがらみ進化論 築地書館 ”
③ 息抜きや後半疲れてきた時など、葉っぱをかじってみるなら“四季の野草
・摘み菜がごちそう 平谷けいこ 山と渓谷社”が良いかも知れません。
朝すこし気温が下がり始めました。お彼岸が過ぎれば、シバグリ・アケビ・
サルナシ・・マタタビ・・・晩秋に真っ赤なフユイチゴが実るまで
ことしも楽しみな秋の実りが続いていきますね。
2023.09.21
6. Shotaro
こう様
早速の情報ご提供ありがとうございます!
大台の沢の地図を作られていたとはあの奥深い山系ですごいですね。
私は学生時代、大学院の途中まで、大台ヶ原のニホンジカと森林衰退のことについて調査研究していました。といってもシカの個体と糞の数を数えたり、ササを刈って大きさや重さを調べたりと中学生でもできることばかりで(笑)、そんなに専門的な知識はないのが正直なところです。
①については私も昨年(?)見て、本も購入しているのですが、大変面白かったですね。生命どうしのつながりということを強く感じました。②、③についてはさきほど注文しました!届くのが楽しみです。ありがとうございます。
ちなみに野草については、知り合いの方の元果樹園を使って春にカンゾウやフキ、ヨモギ、サルトリイバラなどをとって天ぷらにしたり、サルトリイバラは柏餅にしたり(西日本ですので)といったイベントをしています。
参加された方々からは「これが本当の贅沢よね~」とよく言われるのですが、改めて私たちにとって大切なことはなんなのか、利益(金銭)至上主義ともいえる時代の中で改めて考えさせられます。
これからもしばしばこのサイトでこう様やみなさまと交流できるのを楽しみにしております。いろいろと誠にありがとうございました。