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生命誌について

2023.06.28

生命誌活動の先の先

参照記事「研究館より」

こう

研究館で、子供連れの若い夫婦を見かけ、この方は子供の頃、両親と出来立ての研究館に来たのかなって思いました。

研究コアの形成・活動の軌道化・多方面への広報と、先生にとって、艱難辛苦を交え充実した30年と推察しています。
 私も、テーマごとのビジョンを白紙に表現することを楽しむ人なので、先生の達成感がビンビン伝わってきます。

とくに研究館で着目していますのは
“科学を文化に”を理念とされている点です。

さて、今の日本文化は経済の長期低迷に同調するように
仕掛人がなんとか仕事しているだけのように感じます。
 一例として、大衆音楽を見ますと
世代を問わず誰でも知っている唄は、20年前の“世界に一つだけの花”までさかのぼります。欧米の音楽では“ウィ・アー・ザ・ワールド”で、これは40年近い前の唄です。
 音楽は、仏教の声明や仕事唄としての民謡など
特定集団の共通目的の遂行意欲を高めるために始まったそうですが
今の日本では世代を超えた共通の文化価値がとても弱くなりました。

戦後市場の中核だった団塊の世代は来年すべて後期高齢者入り。
一方で、M・Z世代の先端は40代半ばで、これからの中核世代です。
となれば、今は文化の端境期ですね。

先生方の強い思い入れで、研究館活動の成功度イメージは、成功曲線の始点から1/3ぐらい来たでしょうか。

固有文化は進化と同じく、特定地域で長時間かけて育つと言います。
自然に囲まれた高槻の街は研究と地域活動にベスト。
地域をあげて高槻を“科学文化の街”に出来たら最高ですね。

個人主義が進む今の庶民文化事情では日本の底力は弱くなる一方です。ぜひ先の先では、生きもの視点・摂理で社会課題にも向き合い、協調して生きることを強く発信し文化の端境期に一隅を照らしてください。
研究館を“ピリリと辛い山椒文化コア”として成長・醸成させていってください。

2023.06.28

1. 中村桂子(名誉館長)

こうさま

生命誌と一緒に歩んで下さっているのがわかり、心からのお礼を申し上げます。30年前に「科学は文化です」ということを基盤に始めた研究館です。そこには科学が明らかにする事実は大事にしながら、一方で「科学はこのままでいいのかな?」(最近このタイトルでちくまQブックスを書きました。どこかでパラパラ見て下さい)という問いを抱えて新しい知を創ろうという気持ちがありました。最近、科学は文化という言葉はかなり一般的になってきましたが、役に立つという言葉から離れようというだけで、今の科学のありようと科学の本質の両方から「このままでいいのかな?」と問う大事な姿勢が感じられません。
 幸い、「新しい知」への関心は高まり、さまざまな分野から「考え直さなければいけない」という動きが出ています。日常からも進歩・拡大・成長などを掲げた一律の文明から、地域の多様性を活かした文化を基盤にする暮らしへの移行が見えています。今こそ「生命科学」ではない「生命誌」を着実に進めていく時です。外からも様々な要望が届く毎日です。小さい活動とは言え、30年の蓄積は大事にしなければなりません。「ピリリと辛い山椒文化」にこれからも関心をお持ち下さってご意見お聞かせください。よろしくお願いいたします。
                           中村桂子

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