研究
2023.06.08
キアゲハとナミアゲハ
はら
アゲハを毎年飼育している会社員です。パセリとレモンを置いてキアゲハとナミアゲハを世話しています。今年レモンに現れた幼虫が終齢幼虫になった時に薄くオレンジの斑点がでました。キアゲハとのミックスかと思うのですが交配例はあるのでしょうか。確率的に珍しいのでしょうか。レモンで育てましたがパセリあげたら食べたのか、オスがキアゲハの場合とメスがキアゲハの場合で違いはあるのか、ミックスに生殖能力はあるのかとか色々気になるのですがどう調べたらいいのかそもそもよく分からずすでに参考になる論文や研究などあれば教えて頂けますか?
2023.06.08
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
昆虫類ではときどき、野外で雑種個体が見つかることがあるそうです。
キアゲハとナミアゲハの交雑は、比較的観察例が多いようです。
以前、昆虫マニアの方から教わった情報をまとめると下記になります。
・キアゲハのメスにナミアゲハのオスという組合わせでのみ、交雑が可能
・ハンドペアリングに慣れている人なら、簡単に交尾させることができる
・雑種幼虫は基本的にセリ科植物を食べて育つ(母チョウがセリ科に産卵するから)
・人為的に飼育する環境では、雑種幼虫がミカン科植物でも育った例がある
・いずれにしろ、雑種幼虫は生存率も発育速度も通常より悪い
・雑種個体に妊性はなく、子孫を残せない
私自身、キアゲハのメスとナミアゲハのオスでハンドペアリングを試したところ、あっさりと成功したことがあります。イタリアンパセリの葉で卵を産んでくれましたが、孵化率は15%程度でした。イタリアンパセリを使った人工飼料で育ててみましたが、通常のキアゲハの2倍くらいの時間をかけて終齢になれたのが半分くらい、生き残った終齢幼虫も全て前蛹で死んでしまいましたので、成虫は得られませんでした。
少し古い論文ですが、キアゲハとナミアゲハの交雑個体について行われた研究があります。
こちらがご参考になりましたら幸いです。
ちなみに、ドクチョウでは交雑によって新種が誕生した例が知られています。
https://www.nature.com/articles/nature04738
2023.06.16
2. はら
尾崎さん
お返事ありがとうございます。
ときどき現れるものの条件もあり問題のあることが多いのですね。
育つのも遅く小さめの終齢幼虫でしたがうちの雑種は蛹になりました。
貴重ならばと注視し観察してからお返事書くつもりでいましたが、屋外の木の幹で蛹になったこともあり気づいたら蛹が空になっていました。
観察できなくて残念でしたがまた出会いたいと思います。
アゲハ飼育は小規模ながら10年くらいで初めて雑種個体に出会いました。レモンとパセリの鉢を並べていたので発生確率が高かったのかもしれません。帰巣本能があるのかみたいなことも絡めて気になります。
紹介いただいた参考文献などこれから見てみようと思います。
ありがとうございました。