研究
2022.08.19
昆虫食性進化研究室へのご投稿
T・F様
趣味でアゲハチョウの飼育を楽しんでいますが、貴サイトを時々参考にさせていただいています。ラボ日記「発言を慎重にするのは詳しく知っているから」も興味深く拝見しました。いつもありがとうございます。
記事の中程に「アゲハチョウの仲間を休眠させるには、初齢から三齢くらいの幼い幼虫を短日条件で飼育します」と書いてありますが、ネット上には「休眠を決定する時期は2,3齢幼虫の時」という記述が散見します。これは正しいですか?
こういう質問をしていいのかどうかわかりませんが、教えていただければ幸いです。
2022.08.19
1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)
お問い合わせいただきまして、どうもありがとうございます。
ラボ日記の記事を読んでくださったとのこと、大変嬉しく思います。
蝶や蛾の仲間が、どの様にして休眠するかが盛んに研究された時代があり(私の恩師たちの世代)、その頃の文献では、蛹で休眠する種は「若齢期の幼虫」が日長を読み取っていると記述されているものが多いです。アゲハチョウの仲間も、飼育していての経験としてこの知見は正しいだろうと思っています。
ただ、初齢幼虫の日長経験が、蛹での休眠に影響しないのかについては、私は知らないというのが正直なところです。鱗翅目昆虫の種によっては、二齢に脱皮した当日から蛹化するまでの期間に経験した日長が影響するとされているものもいたと記憶していますので、アゲハチョウについても初齢の影響について調べた研究があるのかもしれません。また、我々が実際にアゲハチョウの休眠蛹を育てる場合は、孵化直後から蛹化するまで短日で飼育するので、幼虫後期の影響が小さいのかについても、厳密には把握していないです。
ちなみに、幼虫たちは暗い時間の長さを計って休眠を決めていますが、カメラのフラッシュの様な短時間で豆電球程度の弱い光でも暗期計測開始時間がリセットされて、簡単に長日条件になるという論文を読んで感動した覚えがあります。学生時代を思い出して、懐かしくなりました。
研究員(室長)
尾崎 克久