研究
2022.08.06
人間の感じてる時間と細胞内での時間的感覚の比較人間の寿命と細胞の寿命の差内の時間
人生はなまる
生命体として人間の脳が感じている時間と細胞内で起きている時間の流れの差についに教えて下さい。
細胞内での時間の定義を教えて下さい。
2022.08.09
1. 齊藤わか(表現を通して生きものを考えるセクター)
掲載が遅くなり申し訳ございません。「時間」というテーマに興味をおもちいただき、ありがとうございます!
脳が認識する時間についてですが、哺乳類の大脳は相対的な時間の長さを認識することができます。理研・脳科学研究センターらのグループがラットで実験を行い、大脳の海馬の神経細胞の一部が、時間を認識する「時間細胞」としてはたらくことを発見しました。これによると時間細胞は絶対的な時間の尺度をもっている訳ではなく、ある出来事の時間が別の出来事の時間に比べ、相対的に長いか短いかを認識するのに貢献しているそうです。
一方、細胞そのものに備わっている時間のしくみとして挙げられるのは、体内時計や分節時計(体節形成の際にはたらきます)といった、遺伝子が周期的にはたらいて一定のリズムを刻むというものです。この場合の時間は相対的なものではなく、体内時計は24時間周期、分節時計は90分周期というように決まっています。
体内時計と分節時計について、季刊「生命誌」109号の下記の記事で取り上げていますので、よろしければご参考ください!
https://www.brh.co.jp/publication/journal/109/rp/
https://www.brh.co.jp/publication/journal/109/research02
体内時計はバクテリアなどの原核生物から動植物の細胞まで、さまざまな生きものの細胞に備わっている普遍的なしくみです。ヒトなど哺乳類の場合はさらに、脳の視交叉上核が太陽の光を受けて、細胞ごとの周期のバラつきを補正することで、全身の様々な臓器が同じ昼夜のリズムではたらけるようにしているそうです。
私たちの身体には時間に関わるさまざまなしくみがあるといえますね。日常生活では私たちは時間についてのさまざまな情報を統合して、「今、時を過ごしている」という感覚を作り上げているのかなと想像しています。
捉えどころがないけれど、とても魅力的なテーマ「時間」については次号以降の季刊「生命誌」でも取り上げていきたいと考えています。
2022.09.02
2. 高秀
細胞は段階的に整った時に分裂すると思いますがタイミングを感じるセンサーみたいなものが存在するのですか?
2022.09.02
3. 齊藤わか(表現を通して生きものを考えるセクター)
細胞が何を感じて分裂したり分化したりするのか、興味深い話題ですね。
私たちがもつ真核細胞が分裂に至るまでの段階は4つに分けられ、それぞれG1期、S期、G2期、M期と呼ばれています(細胞周期)。細胞が2つに分かれるのはM期であり、それまではDNAの複製や分配の準備など、段階に沿って準備が進められていきます。その際、各段階で異常が無いか確認し、次の段階に進むかどうかを判断する「細胞周期チェックポイント」と呼ばれるしくみが細胞には備わっています。例えばG1期からS期に移る際には、DNAに損傷がないか、細胞の大きさは十分かなどがチェックされるそうで、これらの制御を担う「チェックポイント制御タンパク質」が細胞質にいくつも存在することがわかっています。チェックを通過すれば次の段階に進みますが、上記のような項目に異常があると、細胞分裂が停止したり進行が遅れたりするそうです。
細胞分裂は生きものが続いていくための根本的な現象ですし、進行具合をチェックするしくみがあるというのはさすがですね。細胞分裂について取り上げた当館の下記の記事もご参考になさってみてください。どんな生物でも当たり前のようにやっている現象の、奥深さを感じることができます。
原核細胞(バクテリアなど)の細胞分裂に関連する記事
https://www.brh.co.jp/publication/journal/078/research_1
真核細胞の細胞分裂に関連する記事
https://www.brh.co.jp/publication/journal/058/research_11