1. トップ
  2. 語り合う
  3. みんなの広場
  4. 蝶の食草について

みんなの広場

研究

2022.07.20

蝶の食草について

匿名希望

蝶の食草の資料を見ると、一種の蝶についてとても多くの食草(食樹)が線で繋がっていますが、それらについて実際にチョウの幼虫がそれを食べ、蝶に成るところを確認しているのですか。例えば初めから幼虫をその食草で100匹育てたけれど、蝶には数匹しか成らなかった、終齢まで育ち蛹には成ったけれど蝶に成る事はなかったでは、安定した食草とは言えないのではないかと思います。その時は蝶と食草を線で繋ぐのではなく、破線で繋ぐのが適当かと思いますが。

それとも文献資料等も総合して蝶に成るかどうかの追試確認実験観察はしていないが兎に角幼虫がそれを食べている、食べる可能性があれば食草としてまとめているのですか。

2022.07.20

1. 尾崎克久(昆虫食性進化研究室)

ご指摘通り、「食草」というためには「自然界で世代がまわる」事が重要な条件です。幼虫が蛹になるまで成長できる、成虫が羽化できる、生殖行動が可能である、産まれた次世代も生存可能である、という条件が整っている必要があります。

現状のデータは、何らかの文献に「幼虫が食べた」という記載があるものを全て、食草として入力してありますので、幼虫が育つのかどうかや、自然界で利用されているかは未確認のものが含まれます。

元データとして利用した文献によっては、「自然界で利用されている」「人為的に与えた場合には問題なく育つが、自然界では利用されていない」といった詳細な記述がされているものもありましたが、これは極めて少数の種に限られます。

共同研究者の皆さんとも多くの議論を重ねた所ではありますが、研究・解析の目的として、蝶と植物の関係の全体像を俯瞰したいと考えていたこともあり、人為的にであろうと一時的にであろうと、食べた事が観察されたものを一律に扱いました。

人為的に与えたら食べるけどちゃんと育たない様なもの等については、統計学的な解析の過程でノイズ・例外として処理されるため、研究目的に与えた悪影響は極めて軽微であったと考えています。反対に、全体像を俯瞰できた事で、分類学的には遠い植物間に共通性や類似点が見つかり、その後の研究で昆虫に対する毒性が似ているという発見につながりました。

このデータベースを利用された方が「おや?」と感じるところも多々あると思いますが(例えば、ナミアゲハがカンアオイを食べる事になっている事など)、気づいた疑問について調べてみるという行動を起こす事で、新たな知識を得るキッカケにしていただければと考えております。

コメントする

お名前(ニックネーム可)
メールアドレス
コメント
アイコン
  • 入力いただいた情報は自動で掲載されません。
    当館の担当者が内容を確認の上、後日掲載させていただきます。
    掲載の折にはメールでご連絡いたします。
  • 内容によっては掲載されない場合があります。
  • メールアドレスは上記以外の目的に使用いたしません。