研究
2022.04.13
イモリの再生について
のん
イモリについてお聞きしたいことがあります。幼体のオキナワシリケンのことで、幼体で左前脚を仲間に噛まれ無くした個体がいまして、すぐに再生芽は確認できたのですが5ヶ月程経った今そこから再生されてる様子がなく、原因を知りたくて沢山の記事を拝見しました。ですが私の理解では難しい部分などもあり、お聞きしたいと思い投稿させてもらいます。当時痩せていたから?赤血球に何か問題があったのか、?切断以外で再生は可能なのでしょうか?
2022.04.13
1. 齊藤わか(表現を通して生きものを考えるセクター)
ホームページの記事などをお読みいただき、ありがとうございます。
当館の近藤寿人顧問からのお返事をお伝えいたします。
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先日行った催しの記録動画「再生力のチャンピオン」
https://www.youtube.com/watch?v=SgDPo-b6bIg
でご紹介している、広島大学の林利憲教授から次のように伺いました。
下記、3つの可能性がありますが、イモリを密集して飼育すると互いに傷つけあうことがあり、次の2番目の可能性が高いのではないかということです。
1. 噛み切られた時にナイフで切ったような平坦な断面ができなかったため、傷口が閉じたときに再生をうながす組織の再編成がうまく起きず、再生芽ができた段階でとまってしまった。
2. 一度腕を噛まれた後にまた噛まれるなどして、再生が止まってしまった。再生の途上で再度傷を受けると再生を放棄することがあるそうです。
3. あまり知られていませんが実験で確認されていることとして、大人のイモリでは、場合によっては腕全体を腐らせて脱落させた上で、根元からきれいな腕を再生することがあるそうです。家をリフォームせずに立て直すイメージでしょうか。腕を腐らせるのには時間がかかります。ただ幼生の場合、この可能性は低いと思われます。
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以上です。今後とも、生命誌をどうぞよろしくお願いいたします。
2022.04.21
2. のん
お返事ありがとうございます。
再生の途中に再び傷つくと再生放棄してしてしまうというのはイモリの負担になるからでしょうか?お話を聞いて個人的に研究してみたいと思うことがあります。再生能力の高いイモリが完全に再生されない場合の条件は何かを知りたいと思いました。今考えている計画として
健康な個体の脚を切断、その後、再生途中の脚を再び切断、傷つけるとどうなるのか?です。調べても中々出てこなく調べ不足かもしれませんが既に研究はされているのでしょうか?
2022.04.21
3. 齊藤わか(表現を通して生きものを考えるセクター)
お問い合わせの件につきまして、近藤寿人顧問より、以下のように回答いたします。
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イモリが脚の再生の途中に再び傷つくと再生を放棄してしまうというのは、少し密集気味にイモリを飼育したことがある研究者たちの間ではよく知られているようですが、積極的にその条件を研究した論文はないという印象です。
イモリが再生力に優れているとはいっても、脚を切断されそしてそれを再生することはかなり負担の大きい(例えて言えば体力をかなり使う)過程です。その再生の途上で再度(噛まれたりして)傷つくような環境では、再生に使う体力が無駄になるので、その際には再生を止めて体力の温存の方に舵を取るという賢い仕組みがあるのではないかと、研究者たちは想像しているようです。
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以上です。状況によっては、再生に体力を使わないほうが良いことがあるかもしれません。
どうぞよろしくお願いいたします。