展示や季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
【外を知ってもう一度中を見る〜分野の違う世界】
生物の研究者が一般の人に「生物の研究をしています」と言った後に、生きものに詳しいのかと思われ、いろいろな生きものの名前や生態を聞かれ当惑することは多いようです。この現象は宇宙物理屋さんにもあてはまります。宇宙物理と天文は違うらしい!まるで、生態や分類と分子生物は違うという主張とそっくり。彼らは生きものの名前ではなく星の名前を聞かれるわけですが、これまた同じで、星の観測が好きでこの業界に入ったわけでない人も多く、そういう人は名前など知らない。でも、この人達の態度が生物の業界とは違うのです。やっぱり恥ずかしい、とか、知らなければ!と思っているようです。生物の研究者にはこの意識が薄いように思います。これは残念なことで、見習わないとなぁ、と思いました。 ハワイ島といえば、すばる。4700mまで登り、望遠鏡が収納されているドームを外から見ました。すばるのような巨大な望遠鏡は、見るといっても、皆が想像するイメージとは少し違います。もちろん、拡大画像も記録できるそうですが、研究者は、どちらかというと、同時に記録されるスペクトルなどのデータをもとに研究しています。これもまた、生物業界での塩基配列の解読の、「解読」という言葉から生まれる誤解と少し似ていて、なんだか笑えます。 その後、山頂から2800mくらいに降りて、星の観測をしました。普通の望遠鏡や双眼鏡を使って観測したのですが、なんだか新聞の印刷の網点を拡大して見ているみたいで、ちょっとがっかり。良く見えるように拡大するという点では、顕微鏡と同じハズなのに、、、これは拡大することに意味があるのだろうか?やっぱりスペクトル使って研究してくれないと、と妙に納得(わかっていないと思いますが、、)。しかし、肉眼で見ると、神秘的な形で空を横断する天の川やドキリとする程くっきりとした流れ星など、とてもキレイ。大昔の人は見上げればいつも満点の星空で、さぞかし想像力を掻き立てられたことだろうなと羨ましく思いました。 学会の最終日に合流したので、学会の雰囲気を感じることはできませんでしたが、分野は違えど研究者って同じだな、と思いました。皆好きなことをしているアクの強そうな人たち。生物分野の研究成果を皆と共有することが目的の私としては、分野の違う研究者達の世界を覗き見ることで、違う角度から生物業界をとらえ直すきっかけとなり、ものを作る上で良い視点を獲得できたなぁ、と思っています。 [工藤光子] |