研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
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クモの縞パターンの論文がでます
2018年3月15日
昨年末に投稿した、オオヒメグモ胚で観察される縞パターンの発展過程を定量的に記載した論文がアクセプトされ、近日中にオンラインで公開されます(詳しい内容は別の記事で報告します)。データを集めてから論文を仕上げるのに非常に長い時間がかかりましたが(3年以上)、論文を投稿してからは異例の早さでのアクセプトとなりました。3人の審査員からコメントをもらいましたが、すべての審査員から高く評価してもらいました。これまで多くの論文を書いてきましたが、ここまで賞賛してくれたことはありません。批判の余地が様々にあることを感じていたのでほっとしました。原稿は語数で14000語超。大作です。普通の雑誌は7000語程度がリミットです。そんなにだらだらと書くな、と批判されそうな領域です。ところが、審査員の反応は逆で、あれが分からない、これが分からない、という指摘を多数もらい、改訂版はさらに語数が増えました。
いろいろな苦労が詰まった論文です。一番の苦労は、第一著者の大学院生の驚異的な実験です。縞パターンの定量解析のためにいろいろな成長状態のクモ胚をひとつの卵嚢から集めるのに、2時間ごと、20時間にわたって胚の固定作業を行い、その後、合計107個の胚を染色し、そこから計測データを得ました。それぞれの胚のデータは3次元で、計測も3次元で行っています。多くは手作業なのでその大変さは計り知れません。それでも、彼女はそれをやり遂げ、有意義な解析結果を出してくれました。審査員にはその大変さも、その意義の大きさも伝わったのだと思います。
他の苦労としては、ライブ観察データを使った細胞の追跡、画像解析や計測データの解析に使ったプログラムの作成などなど。プログラミング言語を学ぶところから考えれば大変な道のりでした。
今回の論文で最も伝えたいこと。それは、クモ胚の美しさ。その美しさには理由があります。数学が好きな人、幾何学が好きな人に、是非論文を見ていただきたいです。
<18.03.20 追記>
オンラインで論文が先行公開されました。(オープンアクセス)
論文の概要を日本語でまとめましたので、ぜひご覧ください。(詳しくはこちら)
オオヒメグモ胚において縞パターンが発展する様子