研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【アゲハチョウの電気生理実験】
私は福岡県久留米市に20年間、佐賀県佐賀市に10年間、合計30年間九州で生きてきました。ですので、九州から離れた生活は非常に不安でした。特に、家族と離れて暮らすこと、大好きな地元の豚骨ラーメンが食べることができなくなる事に不安を感じていました。しかし、BRHに来て二ヶ月経過し、だいぶ今の生活スタイルにもなれ、本格的に仕事ができる状態になってきたなと感じています。 実は先週、九州に帰りました。もちろん実験のための出張です。私がいま行っている研究の一つに電気生理という実験があります。電気生理実験は「ある物質にたいして生物がその物質を認識しているのか?」を調べる実験です。当研究室はアゲハチョウの味覚の研究をしていますので、「ある味物質に対してアゲハチョウがそれを味として認識しているのか?」となります。実際の出力として我々が確認するのは神経軸索における活動電位の変動で、つまりアゲハチョウの味受容器官が味物質に応答した後、味覚応答に関わる神経の反応を調べることになります。この電気生理実験には特別な装置が必要なのですが、BRHにはないので装置を所有する研究室にいかなければなりません。尾崎ラボの共同研究者である九州大学理学部の谷村先生の研究室にその装置があるので、その装置を使用させてもらうために九州に帰ったわけです。 実際に実験を行うにあたり色々なトラブルが発生しました。実験材料として持参したアゲハチョウの蛹が予定日に羽化せず実験に使用できなかったり、蛹の段階で雌と判別して持参したアゲハチョウが雄ばかりだったりなど・・。大変でしたが、なんとか今回の出張の目標は達成できたと思います。大学院生の時は、キイロショウジョウバエの電気生理実験を行った事がありましたが、アゲハチョウの実験はハエに比べて難しいものでした。しかし、実際にアゲハチョウの電気生理をやってみてハエと異なる化学受容システムがあるのでは?など様々な疑問が生まれ、おもしろい仕事になりそうだと感じています。 また、すぐにでも電気生理実験を行いたいと思っています。まだ、私の思考も漠然としている段階ですが、電気生理実験を色々な発想を持って行えばアゲハチョウの味覚応答システムを解明することができるのではないかと考えています。 | |
[昆虫と植物の共進化ラボ 龍田勝輔] |